山田太一の本
山田太一の本を買った。 遠い昔 山田太一のテレビドラマ・シナリオを友人三人で交互に買い合って回し読みしていたことがある。もう少し正確に言えば、向田邦子も倉本聡のシナリオもあった。山田太一の作品には、「マイナス部分でこそ、人は互いを補い合い、豊かになれる」という優しいメッセージがあった。 いや… そう、私が独り合点で勝手に受け取っていたと言い換えた方がいいのかもしれない。 三人のうち一人は 恋人が出来ないという現実から、いつも捨て鉢でふてくされていた。 もう一人は、高校時代の野球部経験以来、同じように熱中出来るものを見つけられず、自分を持て余していた。 三人めは これは私なのだが 教員試験に何年も不合格のまま、就職浪人を続けており、焦燥と自己嫌悪に苛まされる日々だった。 三人はお互いのそうした欠落に、時には同情もするが、時には突き放し、侮蔑もし合っていたと思う。 そんな不出来で、世間への適応力に欠けた三人の胸に山田太一のシナリオは静かに優しく染み入った。 その後、恋人が出来ない友人とは連絡が途絶えた。 だが、かなり前のことになるが、ほんの一瞬、クルマ同士ですれ違ったことがあった。女性を助手席に乗せ、自信のある横顔が見えた。 野球部OBの友人は、芝居でギリギリ食っていた時期もあったが、一家をなし、定職に就いた。 私はと言えば、私立学園の教員試験にどうにか合格し、六年勤めたものの、芝居を一生やろうと思い立ち、あっさり辞め、紆余曲折の後に、再び勤め人に戻った傍ら、アマチュア芝居を続けている。遠い昔、そう、もう三十年も前のことだ。 今、彼ら二人に、現在の山田太一のこの本を読ませたら、どんな感想が返ってくるだろうか? そんな思いがよぎった。 〈追記〉 長ったらしい文章や多少、理屈っぽい文章は、しばらくアメーバブログに書いていた時期があったのですが、面倒なので止めました。迷惑メールの多さにも辟易したのも止めた理由にあります。 そんなわけで、今までのものと多少、違う色々を好き勝手に書いて行きますが、まぁ、適当に読み流してやって下さい。