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2008/05/21
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鉄虎

オーストラリア産のアイアン・タイガーアイです。
ヘマタイトと、鉄分を多く含む赤いジャスパーの部分と、タイガーアイの金色の部分が入り交じった、
渋いと同時に強く押しの強い色合いの石です。

私は自他共に認める水晶好き、変な石好き。
そして密かに「古い石」にも弱いのです。
古い石とは、文字通り古い時代にできた石。石というより岩。

たとえば、ヌーマイト。
http://plaza.rakuten.co.jp/voidmark/diary/200609110000/
今回の石と同じくオーストラリア産のゼブラ・ストーン。
http://plaza.rakuten.co.jp/voidmark/diary/200609070001/
長い長い時を経てきた地球のかけら……という点が、なんとも心をくすぐるのです。

もちろん、今回のアイアン・タイガーアイもまずは「古い岩石である」と言う点が
心惹かれたポイント。

しかし、買うからにはヘマタイトの黒、ジャスパーの赤、
タイガーアイの金色がきれいに出ている石を選びたい。
ねらいをミネラルショーにさだめて、会場を探し歩き、一度は見送った店を再び除いたとき、
最初見たときには無かった石が出ているのを見つけて買いました。

一面をピカピカに磨いた薄板です。
鉄がたっぷり含まれているので、ずっしり重さを感じます。

「手に入れたぞ!」と喜び、さっそく写真撮影……ここで思わぬ問題発覚。
黒い石がピカピカに磨かれているということは、石が鏡状態になっているということ。
角度によっては自分自身がバッチリ写り込み、写らないように角度を変えれば
今度は光を反射して、黒いはずの部分が白く輝いて写ってしまいます。

「手強い……!」

角度を変え、カメラを調節し、なんとか色と模様を写し取ろうと右往左往。
しかし、ちっとも写ってくれません。
反射を押さえ込むと、今度は光が足りなくて手ぶれ防止機能が付いていても画像がぼけるのです。

何とかならないものか……。
半ば白旗を振りながら、石を裏返してみて、目から鱗。
この薄板のアイアン・タイガーアイ、一面はつるつるに磨かれていますが、
反対側は平らに切っただけで、つや消しのまま。

つや消しであれば光を反射せず、鏡のようにカメラを写し返すこともなく、
マクロで迫って撮影し放題!

……ということで、喜んで撮ってしまいました。
こんな風に画面一杯に写してみると、まるで絵画のよう。

黒~濃い灰色に写っているヘマタイトの部分が更に微妙な縞模様になっているのも分かりました。

このアイアン・タイガーアイは、鉱物や地質学の分野では縞状鉄鉱と呼ばれます。

太古の昔、地球の大気には酸素が含まれていませんでした。
最初の生命は酸素のない状態の中に生まれたのです。
やがて、シアノバクテリアと呼ばれるバクテリアが生まれ、光合成によって酸素を生み出し始めました。

大量に輩出された酸素は、海水に溶け込んでいた鉄分と結びついて酸化鉄、
つまり鉄さびとなり、沈殿しました。
それが縞状鉄鉱です。

光合成による酸素の発生は気候や季節によって変化していたので、
光合成が盛んに行われていた季節にはたくさんの鉄が酸化されて沈殿し、黒いヘマタイトの部分になり、
光合成があまり行われなかった時期には、赤いジャスパーの部分になったといわれています。

このような縞状鉄鉱は、オーストラリアだけでなく南アフリカやウクライナなどに大量に産出し、
重要な鉄鉱石となっています。

膨大な量の鉄を酸化させた酸素は、鉄を酸化しつくすと海水にあふれ、やがて大気にあふれて
地球を酸素を含む大気を持つ星に変えました。

これで、地球は命の星へ……! ではありません。

もともと地球の海や大気に酸素は含まれていなくて、その中で生命は生まれ、
生命は酸素のない環境に適応していました。
そのころの生命にとって、酸素は「毒」。
その毒によって、多くの生命が絶滅し、酸素がとけ込むことの無かった環境に残った生命と、
酸素のある環境に適応した生命だけが生き延びることが出来たのです。

いったん適応してみると、酸素は多くのエネルギーをもたらし、
そのエネルギーによって生命はさらに進化していくことが出来たと言います。

酸素が地球に満ちていったその時に作られた岩。
たくさんの命の絶滅と、それを生き延びた命の力、今の地球につながる歴史。
そんな「時間」を秘めた石。

古い石(岩)には、地球の物語という魅力があります。





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Last updated  2008/05/21 10:29:58 PM
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