外はやっぱり暑いね。
ゆっくりと帰ろう。久しぶりに外に出た。別に引き篭もり出はない。たぶん・・・・常に移動手段は車。ある意味、常に個室にいる生活。だから、久しぶりに外に出た。太陽が容赦なく照りつける外に。地面から立ち昇る空気の揺らぎ。耳の中に飛び込んでくる夏虫の大合唱。こんな当たり前のことが、日々の流れに押し流されてた。汗をかきながら、体を動かしながら、思い出していた。昔、自分が感じていた感覚を。気がついたら、知らない場所にいた。たぶん、うちからそんなに離れていないと思う。けど、そこは知らない場所だった。ふと見上げた目線に移ったのはとても大きな青い風景だった。どこにでもあるようで、どこにもない。刻々と変化し続けるその風景にしばらく魅入っていた。正直、かっこつけてると思う。もう一人の僕が、腹を抱えて笑っているのが分かる。でも、もう一人の私は、素直にそう感じれたことに喜んでいた。ゆっくりと帰ろう。また、繰り返しの同じ毎日が始まるだろう。けれど、今だけはそれを忘れて忘却に沈んだ過去の残滓に身を委ねていたい。そろそろ、夕方。帰宅を告げる金の音が街の中にこだまするだろう。子供たちは名残惜しみながらあと少しだけと遊戯を続け、母親たちは夕食の支度をしながら彼らの帰りを待っているのだろう。約束の帰宅時間を今日はどれだけ超えるのだろう?どんな顔で玄関をくぐるのだろう?どんな言い訳を考えているのだろう?ゆっくりと帰ろう。せめて今このときの柔らかな思い出にしみじみと浸りながら。そうだ・・・・・今日の夕ご飯は何にしよう?