カテゴリ:読んだ本・買った本
久々に本の話。。。 今年は、 ご近所さんからウン十冊もの本をドンと貸してもらったり、色々あって、 自分で選ばないような、いつもと毛色の変わった本を読む機会が増えてます。。 自分のお気に入りの作家の新作を読むのも、もちろんワクワクなのだけれど、 視点を変えて眺めたような、新しい景色に出会えるのも新鮮で。。 ちょっと今年は、そんな読書が続いてます。。。 で、 今回はそんな中でも、特に異色! 内容的にも色々思うところがあったので、覚書として記録に残しておきます。 著者は、2002年5月14日、一連の鈴木宗男疑惑に関連して背任容疑で逮捕され、 即日東京拘置所に収監された元主任分析官佐藤優氏。 彼が512日間の勾留中に受けた取調べにおける東京地検特捜部検事との やり取りを軸に、「国策捜査」と呼ばれる事件の真相について綴ったもの。
何と言うか、マスコミに踊らされる日本人の構図って云うのは、昔からあるものだと思うけれど、 彼の記す、外交の裏側(ロシアを舞台とする)は、私達一般庶民には、全然想像も出来ない世界で、、 本当に固唾をのんで読み進める、、、と言う感じ。
何故自分が巻き込まれ逮捕に至ったのか、自分のスタンスと、主張を展開していく 描写力や説得力が半端なく凄い! ノンキャリアでありながら鈴木宗男氏の側近、外務省のラスプーチンと呼ばれるまでになった理由が、 この本を読むとすんなり納得できる気がします。 恐るべき知性!! 大学で神学を専攻していたと言う、佐藤氏の深い洞察力や精神性に感嘆、 後半、東京拘置所に留置されてからの検察官とのやり取り。拘置所内での生活。 特に最後に死刑囚(あぁ、彼の事だと判る。。)の所内での生きざま、、、 こんな言い方はヒンシュクかもだけれど、大変興味深く。
最後まで一気に読ませ、すっかり佐藤優ワールドに引き込まれると、これは国策捜査、 不当な逮捕劇、との思いに駆られるのだけれど。。。ちょっと待てよ、と気になる点もあり、、、 結構思いは乱れました 。。
私的には幾つか引っかかる箇所があって。。 自分は私利私欲でなく、国益の為に働いた、と言うのが彼のスタンス。 監察官から、貴方はプライドが高いと指摘されると、言下に否定するのだけれど・・・ で、成程貴方は国益の為に動いたのだ、、と言う事を、相手側に言わせる、、と言う、用意周到さ。 ここら辺は、気を付けて読まないと、、と、ひねくれ者は思ってしまうのよ。 で、 一番気になったのは。。 逮捕前の同僚との会話。(だから、かなり早い段階で出てくる箇所ですが) 「新聞は婆さんの危うさについてきちんと書いているんだけれど、日本人の実質識字率は五%だから、 新聞は影響力を持たない。ワイドショーと週刊誌の中吊り広告で物事は動いていく。」 あ、婆さんって云うのは、田中真紀子氏の事ね、、笑 この中で、「日本国民の識字率5%!!」と言いきる、外務省職員の感覚。 もちろん、マスコミの狂騒の中で、国民の声に煽られるように自分の逮捕もあった、 との氏のスタンスからしたら、真実も見ない、愚かな国民。。と言う感覚なのでしょうが。 ここまで言い切るか?? 正直言って、外務省は確かに腐敗が進んでいた面もあったろうし、彼は優秀な職員であり、 身を粉にして働いた挙句、切り捨てられ、使い捨てられた、酷い目にあったのは真実だと思うけれど、 (どう考えても、上司の決裁の降りた職務が、逮捕の理由になるのはおかしいでしょ、、) 彼の中にも外務省全体にある、特権意識があったんだと思えてならない。。 あの頃盛んに外務省の無駄な経費の使い道が下世話な感じで報道されていたけど、 (1本ウン十マンのワインゴロゴロとか。。やっぱりふざけるな!と感じるでしょ。。) 外交官からしたら、機密費の使い方、何も判らない国民が、いちいち口挟むな、 が普通の感覚なんだろうな。(知り合いから、外務省職員の特権的な待遇は多々聞いたよ) でもやっぱりそれは、税金なんですよ。 庶民感覚では気になるんですよ。。 で、田中真紀子氏の事も、決して悪しざまには書かず、けれど会話の中事として、 婆さんと言う描写を使う、、(直接の悪口よりも、悪意を感じる描写。。) このあたりに、老練な意識操作を感じるのよね。。(ま、何しろ彼は諜報のプロなのだから)
ともかく、色々な警告を与えてくれる1冊でした。 含蓄ある、ハッとさせられる言葉が随所にあります。
この中で、ナショナリズムに関しての考察があって。 「ナショナリズムには二つの特徴がある。第一は「より過激な主張が正しい」という特徴で、 もう一つは「自国・自国民が他国・他国民から受けた痛みはいつまでも覚えているが、 他国・他国民に対して与えた痛みは忘れてしまう」という非対称的な認識構造である。 ナショナリズムが行き過ぎると国益を毀損する事になる。私には、 現在の日本が危険なナショナリズム・スパイラムに入りつつあるように思える。2005」 ごもっとも。。 と、今の日本を見ていると実感。
この本が出版された事がある意味驚きなのだけれど、何と、賞も取っているそうで、更にビックリ!
ただ、鵜呑みにして絶賛するコメントも目にするけれど、それは又違うと思う。 彼は、そういう事の裏側を見よ!と、自ら警告しているのだから。。 あるところで読んだ言葉。「無関心はとてつもない恥になり、ついには罪になる」 知らなかった、ではなく、知る努力をしないと。。 そして、物事をジッと見極める目を持ちたいものである。
他にも何冊も本を出されているようなので、読んでみようと思ってます。。 佐藤優さん、いろんな意味でとても気になる。。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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