生まれて初めての味
今月はじめに行われた義父の一周忌には義弟家族の他に大阪に住む親戚たちも参加してくれた。遠いところを来てもらったので法要の引き出物とは別に交通費を人数分用意して見送った駅で別れ際に渡したのだがみんな遠慮してなかなか受け取ってくれず「これは亡父の気持ちでもあります。帰り道の御守りと思ってどうか受け取ってください。」とお願いしてようやくおさめてもらった。後日「あんなにたくさん包んでくれて。かえって迷惑かけてしまったねぇ。」とお礼の電話をいただき そして「ほんの気持ちやから」と届いたのが但馬肉 すき焼き用&焼肉用まるで貴重品のように一枚一枚ビニールシートに包まれてたっぷりと霜の入った特選和牛が すき焼き用と焼肉用の2種類あわせておよそ2キロ近くはあった。「明日の夜はすき焼きやでぇ!」と高らかに宣言すると翌日ダンナはシゴトを早めに切り上げ息子たちも予備校やバイト先から大急ぎで帰宅してきた。ひさしぶりの全員集合なるほど 美味しいものがあると自然と帰宅が早くなるんやねぇ。普段あんなに遅いのは どゆことかな 「あははははは!」ニンゲン 美味しいものを食べると自然と声をたてて笑ってしまうらしい。あまりの美味しさにハイテンションになるオカンいつもはテレビに夢中で何を食べても反応のないダンナも「お~っ」と唸りながら一枚一枚 じっくりと味わっていた。肉を食べたい盛りの息子たちはというと「なんか、肉を食べてる気がしない。」そうやろう そうやろうそれほど噛んでいないのに口の中でほどけていくような感覚彼らにとって生まれて初めての味に違いない。オカンはときどき職場で食事会があったりして美味しいものを食べる機会が多いからあんたらが好きなだけ食べなさい。ところが しばらくして次男ポチが箸を置いた。あれ? もう食べないの?ひょっとして足らないかと思ったのに。「ねぇ お母さん。これはボクが食べるものじゃない。未成年が食べるような肉じゃないよ。自分で稼がないうちにこんな味を覚えたらあかんような気がするねん。」ボクらには噛み応えがある安い肉でじゅうぶんだと笑った。長男チロも思ったほど箸が進まず結局 すき焼き肉は数枚余り一枚は翌朝のポチの弁当のおかずに。超豪華弁当ざます それよりもお肉の味が染みた野菜がウマイと鍋の白菜やネギをかき集めている姿がまったく健気というか それとも ただの貧乏舌なのか翌日の焼肉は大喜びしたがやはり霜降りの脂が多くてすぐに満腹に。どうやら胃袋が高級品を取り扱っていないようだ。←牛丼屋の肉でじゅうぶん幸せなんだと