カテゴリ:essay
福間さんの、昨日の詩を受けて、今度はぼくが書かなければならないのだが、久しぶりに女房のおともで車を出して買い物に出た。その間も、書くべき詩のことを考えていた。ふと「美しい晩秋」という句が浮かんだ。まてよ、これは俺のものではない、だれかが使ったことのある句だという気がしたが、そのままにしておいた。
今、英語の勉強を終えて、一杯飲みながら、吉増剛造さんのThe Other Voice(02年)という詩集を開いて、確かめたら、「美しい晩秋の朝のひととき」というタイトルの詩があった。2001年11月13日に、吉増さんを招いて前の職場で講演会をお願いしたとき、そのとき書いてくれた詩である。その講演会のときに配布されたものと詩集のものはだいぶ違うのだが、ああ、ここにあったのかという思いで読み返してみた。この詩は、はっきり言って、この詩集のなかでは一番面白くない詩であるが、個人的なことを越えて、「美しい晩秋」などという陳腐さの手前にあるクリシェに一種異様な迫力でバイアスをかけることができるのが吉増剛造であるし、それはだれもかなわない。 最近の彼の詩集は読んではいないが、「詩人」としてのその仕事の途切れの無さには驚く以外はない。この言葉をもらって福間さんの詩のことばを受けてみたいと思った。 酒がなくなっていたので、リカーキングという安売り店に行く。喜界島のいつもの黒糖酒、1800mlパック入りで1800円余り、反対側にアイラ島のシングル・モルトのウイスキー「ISLAY」あり、これがなんと美しいケース缶に入り、1600円余り、この二人の勝負は水入りになるぐらい長かったが、今回は喜界島は負けて、アイラ島がしぶい潮風のような寄り切りで勝ちを収めた。村上春樹のシングル・モルト探訪記のような本があったはずだと思い、書庫を探したが見つからない。調べてみようと思ったのだが、この酒はそこで紹介されていたのだろうか。この隣にボウモア?があったが、これは三千円近かったので、手を伸ばすのはやめた。それに、こいつは、いつか友人の家で出されて、ぼく一人で殆ど空けてしまい、あげくのはてにそこでダウンしたことがあったので、あまりいい思い出がなかったからだ。 「美しい晩秋」の午後に、こういう非詩的な買い物をしたのであった。明日は福間さんと関さんの朗読会だから、今晩はあまり飲みすぎないようにしよう。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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