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詩人たちの島

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April 9, 2006
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カテゴリ:music
ローリング・ストーンズの名古屋公演に行ってきた。ドームに電話したら、当日券が結構余っているようだったので、行き損になることはないだろうと、意を決して職場を飛び出してしまった。そのしわ寄せは、今日やってくるはずなのだが・・・・。それにしても京都/名古屋間の時間距離の近さにはびっくりする。京都でひかりに乗ったその1時間後には、ドーム最寄りの大曽根の駅を出ていたのだから。

 のっけからJampin'Jack Flash、It's Only Rock'n'rollで畳み掛けてくる。その勢いに圧倒される。ミックの舞台を見るのは、東京ドームの柿落としとなったソロ公演も含め5度目だが、声、動きのキレ、サービス精神、どれをとってもまったく衰えを見せないのには驚く。あの広大な舞台を走り回りながら歌い続ける62歳というのは、どういうものなのか。
 キースは、ES-335をメインに野太い音を出していた。この人が得意のリフレインを嬉しそうに繰り出すところが、舞台上のスクリーンに大映しになると、なんとも言えない幸福感が会場を包んでしまう。どこまでがこの人でどこからがあの音なのか、わからない。そういう人である。
 ロニーはテレキャスターとゼマイティスと使い分けていたが、基本的にはキースよりもトレブリーな音色を使っていた。とはいえ、実際に音楽がぐいぐいと進む中では、二人のギターは渾然一体となってしまうのだった。ツアー・パンフレットにもあったのだが、キース自身、二人のどちらがどの音を弾いているのかわからなくなる瞬間があって、その瞬間こそがたまらないのだと言っていた。そうなのだろう。
 2本のギターが絡み合ってうねるようなリズムを生み出す。熱をもったシンプルな混沌が生まれ、そこからすべてが放射される。そんな感じだ。
 このスタイルはストーンズ独自の偉大な発明である。そして誰もが試み、挫折するものでもある。「ルーズでラフ」と形容されるスタイルだが、普通に真似をしても、単なるだらしのない演奏に終わってしまう。うねりまくる二本のギターを串刺しにして、混沌に明晰な光を与えているのが、チャーリーのドラムである。ジャズ的な教養に裏打ちされた、的確でタイトな演奏が、音の運動に方向を与えているのだ。
 このすべてが一体となって、とてつもない、生き生きとした音楽を作り出している。その躍動のさなか、Gimme Shelterでは、ぞっとするような暗い淵をかいま見せる。ストーンズには、セックスやドラッグや死と結びついたエピソードも多い。しかしここで鳴っているのは、生と死、善と悪を超えたところから湧出する、圧倒的に肯定的な音楽だ。

「ザ・ローリング・ストーンズ トリビュート・ブログ」のなかで、くるりの岸田繁がいいことを言っている。
「ストーンズの魅力は、楽曲のよさを超越する「演奏のおもしろさ」にあると思っている。よくビートルズの楽曲がスーパーマーケットのスピーカーでオルゴール・アレンジで流れるが、ストーンズではありえない。つまり、演奏が楽曲そのものなのだ。このおもしろさに気付くと、もうストーンズ中毒から抜け出せなくなる。」

 そうなのだ。ストーンズの音楽は、どこかでつくられたものをなぞる音楽でない。そういうやせこけた音楽ではなくて、その場において滾々と生まれ続ける音楽である。まさにその場にしかない、「現在」そのものだ。この「現在」とは、始まったり終わったりしないものだ。だからストーンズも終わらないのだろう。永遠に死なないのだろう。演奏が続く間、それは間違いのない確信であり続ける。回転し続けるエロス、生のエネルギーそのものだ。

 アンコール2曲目のSatisfactionで僕は席を立った。この曲が終わって客電が着いたら、白々とした現実に戻らなくてはならない。制服の係員に、囚人のように誘導される群衆の一人に帰らなくてはならない。その時、このストーンズ的瞬間は遠く飛び去ってしまうだろう。
 だから僕は、Satisfactionを口ずさみながら、スタンドで揺れ動く聴衆たちをまともに見ながら、その間を駆け上った。その時、花道を駆けるミックになったような気がした。僕もまた、そして誰もがまたストーンズなのだと思った。
 そういう訳で、このライブは僕にとっては終わっていないのである。まだ演奏は続いている。石は今日も転がっているのだ。

(註)
高野さんのローリング・ストーンズのライブの感想です。あまりに素敵だから、許可をいただき、ここに転載することにしました。高野さん、ありがとう。






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Last updated  April 9, 2006 06:04:35 AM
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