カテゴリ:翻訳
前回の日記、湯浅ましほの解説を訂正しておいた。今日湯浅さんから送られてきたメールで校正した。読み返しての感想、詩の中の患者と医者の対話の機微をよく捉えている、患者はたぶんカーヴァーその人なのだろうが、普通の人間、ミニマルな人間を描くことに固執したこの「小説家」は「詩」のなかで、自分が描いてきた数々の短編のまさにミニマルで普通の主人公たちの一人を演じているかのようだ。湯浅さんは自らの訳も添えてあるので、それも掲載しておく。この訳と3つの解説を読むことで、私はこの詩の本質をつかまえることができたと感じている。
What the Doctor Said (湯浅ましほ訳) 彼は言った よい兆しではありませんよ 彼は言った 見通しは悪い 事実 とても悪いですよ 彼は言った 片方の肺に三十二個まで数えたんですがね そこで僕は数えるのを止めました 俺は言った いや有難い そんな物それ以上あるなんて 僕も知りたくないですよ 彼は言った あなたには信仰がありますか あなたは木立の中に跪いて 救いを乞うことができますか 滝に行き当たった時 顔や腕にかかる 霧のような水しぶきの中に立ち止まり 真理を求めることができますか 俺は言った まだですよ でも今日から始めるつもりです 彼は言った 本当にお気の毒です 彼は言った 別のことを知らせられたらよかったんですがね 俺は言った アーメン 彼は何か他の事を言った 俺には聞き取れなかったけど そして 他に何をしていいか俺にはわからなかったし 彼にもう一度繰り返して言ってもらいたくもなかったし その上 俺も充分に理解することを強いられたくなかったから 俺は彼をただじっと見た 彼も俺に視線を返した そこで 俺は急いで立ち上がって この男と握手をした 地球上の誰も俺に呉れたことの無い物を 俺に呉れたこの男と 習慣は恐ろしいものだから 俺は 彼にありがとうとさえ言ったかもしれない お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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