カテゴリ:essay
「死」がやさしく私のために止まってくれた
というのはエミリー・ディキンソンの傑作、 Because I could not stop for Death― He kindly stopped for me ― The Carriage held but just Ourselves― And Immortality. の最初の2行を引用したのである。あとの2行は「馬車に乗っているのはただわたしたち― それと「不滅の生」だけだった。」と続く。 この馬車はどこに向うのか?墓場へ。この詩の最後は、 Since then ―'tis Centuries ― and yet Feels shorter than the Day I first surmised the Horses' Heads Were toward Eternity ― それから―何世紀もたつ―でもしかし あの日よりも短く感じる 馬は「永遠」に向っているのだと 最初にわたしが思ったあの一日よりも― (亀井俊介編 「対訳 ディキンソン詩集」より) こういう感覚はディキンソンの固有のものであり、最上のものでもあった。「死」を優しく擬人化することで、彼女は「死」をしっかりと見つめる。それとともに死の恐怖や嫌悪はすっかりなくなってしまい、読者も「永遠」や「不滅」が、それら自体が「死」と関係するなかで、その堅苦しさを払い落とさざるを得ないことに気づく、彼女にかかれば「不滅」などたいしたことではないのである、そういう感覚、一種の奇妙なくつろぎを味わう。宗教と近そうで、それとは無限に距離のある世界、それがディキンソンの詩の世界である。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
May 16, 2006 10:03:09 PM
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