詩人たちの島

いつものことだが、追い込まれているというなじみの感覚から脱け出せないでいる。連休の初日と日曜日の２日間はクラブの引率で田無まで出かけた。６年前までは拝島駅のそばに住んでいた。片倉から八王子まで出て、八高線で拝島まで行き、そこから田無まで西武線で通うということを２日間続けた。なつかしかった。田無駅から歩いて田無工業高まで十分。この高校の建物や中身の充実にビックリする。立派なものだ。武蔵野女子学院もすぐ傍にある。とくに土曜日の暑さのさなか、剣道の防具をつけて５００名近い生徒たちは熱中症にもならずに頑張っていた。ぼくはそこに立っているだけで倒れそうだった、外に出ても体温と同じか、それよりも熱く感じる気温に、なす術もなく、ただただ茫然としていた。
今日は打って変わって肌寒い。しかし、爽快とはいかない。２、３日前からだが、体のある部位にできもののようなものが出現して、膿をもって腫れている。今日はその膿が血交じりで出てきたから、少しは回復に向っているのだろうが、不快さは変わらない。病院に行く暇がないので、自然治癒を待望するしかない。女房の厳命で明日、暇を作って行くことにしているが、明日にならなければそれも分からない。

家から一歩も出ずに、午前中は倉田良成著『ささくれた心の滋養に、絵・音・言葉をほんの一滴』（笠間書院）の書評に没頭する。道筋がだいぶ出来てきた。倉田君が捌いた歌仙の実作が付録として掲げられていて、その「捌き文」なるものが、非常に面白い。たぶん、この歌仙についてはだれも言及しないだろう、だから俺がやってやるなどという気持を起こしたのが良かったのか悪かったのか、遅々として進まない。面白くて読みふけってしまうのである。でもあと少しで明瞭になるだろう、ぼくの書評も。それが少しずつ立ち上がってゆくさまを楽しみながら書いている。倉田君にも、この書評を掲載してくれる詩誌COAL SACKの鈴木さんにも悪いのだが、原稿のいま少しの遅延を了承してもらうしかない。

７時前に郵便受けに出て見ると、『樹が陣営』３１号が届いていた。いつものようにすごい特集がある。その特集は―「子ども問題」は「大人問題」である―と名を打たれているが、この雑誌の編集者というか主宰者というか、佐藤幹夫さんにぼくも現場から「生徒」の犯罪や問題などに書いてくれると頼まれたのだが、力にあまるといって断ったものの特集である。興味のある方は是非購入して一読ください。ぼくはそこに「書評」を書かせてもらっています。この「書評」というスタイルを、どうにかして自分にとって実りあるものにしてみたいと最近思っている。エッセイという形式と思想に、書評という具体物を包摂して、その二つとも「自由に」「自由であるように」そこで行為できないものか、というようなこと。

高野五韻さんのblogで知ったのだが、五韻さんの「一滴」評が笠間書院のＨＰにリンクされている。これは倉田さんが笠間の編集子に紹介したのだろう。いろんなつながりが、「滴」のように生まれてくるのも、『ささくれた心の滋養に、絵・音・言葉をほんの一滴』がもたらす「滋養」であり惠のせいにほかならない。