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詩人たちの島

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July 28, 2007
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カテゴリ:書評
八王子の夏祭りで、花火の音がする。家からは見えないので、近くの公園に出て見てきた。外に出ても蒸し暑さは変わらない、それでも次々と打ち上げられる花火の威勢のよさに、少し気分が晴れる。打ち上げ花火も、ずいぶんモダンな形態を志向しているらしく、星雲を思わせるような宇宙的な図形を描くものなどがあった。すぐに退散する。

今日、義父をデイケアに送り出したあと、久しぶりに、女房と二人で立川に出かけた。昼飯を食べて帰ってきた。立川の山野楽器に立ち寄り、ナクソス版のCD2枚をぼくは買った。一つはギーゼギングがベートーヴェンのコンチェルト4番と5番を演奏したもの。前者の4番は吉田秀和が言及したラン・ランの演奏の先蹤という言葉が記憶にあるのだが、そのときの演奏ではないだろう。39年ザクセン州立管弦楽団、指揮はカール・ベームです。5番の「皇帝」は、なんと1934年で、ウィーン・フィル、指揮はこれまたなんとブルーノ・ワルターという豪華版。
もう一枚は、ぼくにとって珍しいもので、ナクソスはこういうものを出してくれるからうれしいのだが、あのブレヒトの「三文オペラ」の作曲者クルト・ワイルのシンフォニー1、2番と「闇の女」が収録されたもの。これは2004年、ボーンマス交響楽団で指揮はマリン・オールソップという人、全然知らないオケと指揮者。cd二枚で2千円というのは安いと思う。

義父がケア会社の車で戻るのが、4時過ぎだから、それに間に合うことが絶対条件の短時間のデートであった。11時に家を出て3時には帰った。郵便受けに、今井義行さんの新詩集『ライフ』(思潮社)があった。横になって読んでいるうちに少し眠った。しかし10分ぐらいだ、そのあとすべて読み終わる。読み終わったら、興奮した頭を鎮めたくなったので、片倉城址に一人で散歩に行く。そこでいろんなことを考えた、この詩集の読後感を書いてみようとか、それを書くならどういうスタイルで書いたらいいのか、書き始めは?などなど。

1997年に今井義行は『永遠』(1997年・ふらんす堂)を出している。これは彼の初期の詩集といってもいいだろう。「永遠」に大人になれそうもない青年の、自己処罰と自己劇化の混交したエクリチュールの切れ味の鋭さ、激しさは、『ライフ』では抑えられている、あるいは、かつての青年が着地せざるをえなかった現在の「ライフ」の場からする「祈り」として鎮められているとも思える。『永遠』から『ライフ』までの変化をたどることは今井義行論を書くことに他ならないが、その余裕がない。ここでは解説抜きで、新詩集の『ライフ』の冒頭の詩と、『永遠』の冒頭の詩を引用しておく。これは後日のためにするのである。


腹の底から滲み、やがて輝きだしていた
あれら あのことばたちが
人のたましいの樹の梯子を
駆け昇ろうと思った営みを阻んでは駄目

私たちは大切な「瑠璃の珠」です

ことばたちが うたかたのように
気楽に濫用され過ぎてはいないか
もう… 詩を、泣かせるな!

サルビアが群がり真赤に燃える公園では
鳩が青草のサラダを夢中で食べていた
すべては無心の「詩」だったさ

北に拉致された人たちを表そうとすると
詩としては失敗する可能性が高い
だから詩に書かれにくいのだ
メッセージに終始することへの畏れ
でも  元気で生きて帰ってください

幸せが広がってほしいと祈れば
人々の背中を神の指先が射してつらぬく
私もそれに震撼した事がある
詩霊が帆をかかげた光の瞬間であった
      

(「詩を、泣かせるな」『ライフ』より)



次は『永遠』の冒頭の詩、


くちびるをひらく
くちびるとくちびるをかさねる
しずかに息をもらす
冬のあいだ
なまえなど、要らない
くちびるだけを信仰する
遠くのほうまで
ひびがわれているから
芯まで、凍える
くちびるをひらく
くちびるとくちびるをかさねる
あなたの唾は異国の尖った川のようだ
初霜の水辺をあるくと
ぎんの幹線どうろが弓なりに
ひろがっていた
ぼくは帝都の乗り物をひろって
そこからまた流された             (「水際」)



片倉城址のベンチに座ると、上方は緑の海だった。セミが鳴いていた。幾層もの緑をなしている樹木の名を知りたいとも思う。でも緑と、表象するだけで私には充分である、いまだに、それも確かなことだ。しかし、この緑は私の緑、属性なんかではない。





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Last updated  July 28, 2007 11:01:41 PM
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