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詩人たちの島

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August 8, 2007
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カテゴリ:書評


1944年、ドイツ生まれ。ドイツ文学を修め、69年からイギリスに定住し、イースト・アングリア大学で文学の教鞭をとる。散文作品Schwindel,Gefuhle(『眩暈、感情』90年)、Die Ausgewanderten(『移民たち』、92年)、Die Ringe des Saturn(『土星の環』、95年)を発表し、ハイネ賞、ブレーメン文学賞など多くの文学賞に輝く。遺作となった本書(01年)も、全米批評家協会賞をはじめ多数受賞した。2001年、住まいのあるイギリス、ノリッジで自動車事故に遭い、逝去。




一番上のページに掲載した『アウステルリッツ』(白水社)の作者Winfried Georg Sebaldの短い略歴が同書の裏カバーに上記のように載っている。
たしか6月、立川のオリオン書房のノルテ店で購入したものだ。そのときのことを覚えている。ドイツ文学のコーナーに平積みされた、この本のカバー写真に妙にひきつけられて買ってしまったのだ。その写真とは、この小説の中で語り続けるアウステルリッツなる人物の幼少期のものと、読んだ今は分かるのだが、実に不思議なポートレイトである。この子のいぶかしげな、もの問いたげな眼にひかれてぼくはつい購入したのだった。
アウステルリッツ2

最初から最後まで改行のない、全体が一段落の稠密な檻のような作品に閉じ込められて、ここ2、3日過ごしている。あと少し、あと少しというような気持で読んでいるのだが、永遠に終わらない悪夢に閉じこめられている。途方もない作品であるとしか言いようがない。語り手はアウステルリッツの語りをひたすら記録するだけなのだ。そしてこの語りは微に入り細を穿つ体のものだから、その細部が悪夢のように膨らみリアリティをはるかに越え出てしまう。なんといっても驚くのは、ゼーバルトという作家の鬼気迫る描写力である。描写、描写、描写、すべてはここから始まる。アントワープの駅、リバプールの駅、ウエールズの風景、チェコの中央駅の描写、それらが導くものは何か、それは読者の驚愕の権利に属するからここに書くのは控えておこう。

過去への果てしのないアウステルリッツの遡及が単なる懐古や、厭な言葉だが「自分探し」に終わらないのは、そこに厳然としてナチスの歴史があり、それを見据えているからだ。そもそも受難の物語なのだが、それが人を打つやり方は全く凡百のそれらとは異なる。そこにこそこの作家の方法があるのだが、それをうまく伝える力がぼくにないのが残念である。



閑話休題。炎暑の日が続く。昨日から古典の講習を始めた。参加者は10名くらい。受験勉強は粘り強くやるしかない。そういうことが分かっている連中だけが参加しているとぼくは思っている。だから、老骨に鞭を打って頑張っている。あとのくだらない仕事はやりたくない。それでいいと自らを慰めているのだ。

体力を保つために、一年ぶりに湯殿川ぞいの道の散歩をまた始めた、ひたすら歩くだけ。1時間30分の散歩で汗だくになる。何も考えない。湯殿川がぼくを待っていてくれたのだと思う。







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Last updated  August 8, 2007 10:30:25 PM
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