カテゴリ:essay
分厚い専門書などに、滑り込むようにひそかに、小さな正誤表がはさまれているときがある。だれも、そんなもの読みはしないけど、その出版社と著書の「誠実」さの証であるといわんばかりに、その半紙はよく見ると、変な、しつこい自己主張をしているようでもある。最初からちゃんと校正しろよ!といいたくもあり、だれも注意しないような間違いなのに、なぜ?と思ったりもする。
その正誤表を英語では a list of errataという。エラッタ、ラテン語系統?なのだろうが、なんか変な感じだ。エラッタ、ラッタ、エラッタ。太宰なら「生まれてすみません」といいなおすに違いないが、エラッタというのも、どこか青森の言葉のように響くから面白い。 今月の詩としてアップしたのはcummingsの詩で、タイトルなんて大げさなものは、ぼくはいらないというタイプの人の詩だが、これは正誤表のもじりだ。いつものように誤訳してみる。 「放蕩」を「寛大」と読み直せ ―「若さ」を「老年」と― 「ひりひりする驚嘆」を「平凡な驚き」と (それからページをめくれ) 「安堵」を「恍惚」と読み直せ ―「詩」を「散文」と― 「戒め」を「好奇心」と (そして、おまえは目を閉じよ) というような詩だが、アリタレーションやライムの技巧に満ちた詩でもある。こういう詩も楽しい。もし、私がクリエイティヴ・ライティングや詩のワークショップなどの授業をするときがあったら、「正誤表」というテーマで一回はやってみたいものだ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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