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詩人たちの島

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February 7, 2008
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カテゴリ:書評
THIRTEEN WAYS OF LOOKING AT A BLACKBIRD

というタイトルのWallace Stevens の詩を今日は「勉強」した。3年生は自宅学習期間というか、受験期間で、授業はない。私は3年の授業だけ、この一年間持っていたので、今授業はない。3年間に一度だけめぐりくる、「至福」の時間を私は過ごしているのだが(これも今年で最後)、高校受験が近づけば、またいろんなことで忙しくなる。最近は図書室にこもって、Stevensを読んでいる時間が多い。今日は上記のタイトルのとおり、13連に分かたれた詩を、じっくりと味わってみた。

次のように始まる。


Among twenty snowy mountains,
The only moving thing
Was the eye of the blackbird.


I was of three minds,
Like a tree
In which there are three blackbirds.

しぶい漢詩を思わせるような始まりで、コントラストもそんなに斬新にも感じないのだが、「ただ動いているのはクロ鶫の目だけ」という表現には、対象をしぼりこむ力を感じる。blackという語のコノテーションが、この詩全体に味をつけているが、その始まりは不動のなかの動で、ある不穏さを予感させる。2はどういう意味だろうか。「私は三つの心から成り立っていた、木のように、その木には三つのクロ鶫がいる」ということか。三という数字には何か意味があるのかもしれないが、three, tree,と韻を重ねていて、心の三つの位相と三羽の鶫の単純な対比が主であろう。

こういう調子で詩はモノローグをもとにして積み重なるように、墨絵のタッチで描かれるという感じである。



The blackbird whirled in the autumn winds.
It was a small part of pantomime.


A man and a woman
Are one.
A man and a woman and a blackbird
Are one.

3は黒鶫の秋空での旋回を、無言劇の一部だと述べる。このメタファーはいい。4はとても不思議な感じがする。抽象的なのだが、それが吃音者の言葉のように、視覚的にそうだと私は言いたいのだが、いわば見えるように聞こえるのである。三行目に黒鶫を含めて「一つ」だと断定するのが驚きである。AとBはなじみの語であり、概念である。AとBは「一つである」と規定する。述語は抽象的な概念であるが、なじみのものだ。愛し合っている二人は「一つ」であるよね。その二人に異質な黒鶫を加えてみよう、それでも「一つ」だと、詩は規定するのである。このand a blackbirdという付加がなじみのA man and a womanに亀裂を入れるのだが、それをAre oneというようにidentifyすることで、この無言劇に小さな、しかし意味ありげな動きが動くということ。そういうふうに私は読みたい。


I do not know which to prefer,
The beauty of inflections
Or the beauty of innuendoes,
The blackbird whistling
Or just after.


Icicles filled the long window
With barbaric glass.
The shadow of the blackbird
Crossed it, to and fro.
The mood
Traced in the shadow
An indecipherable cause.

5も単純な対比から成っている。beauty of inflectionsとbeauty of innuendoesが主であろう。前者は「湾曲の美」、後者は「風刺の美」、こんな単語はじめてお眼にかかったが。きみはどちらが好きですか?「クロ鶫が鋭く鳴いている」と「ちょうどその後」は、どちらを選びますか?6の前半分は室内の粗野なガラス窓、つららに覆われたそれを通して見た鳥影。こういう描写の具体性がとてもいい。最後の三連は「哲学」のようなものの萌芽。長い単語、長すぎて「判読できない」原因を、あるムードが影の中で追いかけたのである。取り出すなら、「黒鶫の影」と「解読できない原因」との結びつきが、この連のポイントであろう。

たしかにASIATICさんがコメントで紹介してくれたFrost said, "Stevens, you know the problem with you? You write about bric-a-brac.'" というbric-a-brac(骨董品)的な言葉が多いですが、弁護すれば、それもわざと使っているのであろう。

ここまで書いたら眠くなった。おやすみ。(註・原詩の各連の番号はローマ数字だが、このお馬鹿ページはそれを機種依存文字と言って嫌うので、アラビア数字に変えてある)





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Last updated  February 7, 2008 11:28:39 PM
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