カテゴリ:essay
沖縄タイムス社から出されていた、「沖縄文芸年鑑」が今年の号で終刊するということだ。いろんな理由はあるのだろうが、端的に言って、現代の出版状況の悪化が原因だろう。沖縄タイムスは日刊新聞で、そこに今まで「年鑑」に出されていた文学賞などの作品を吸収するということだが、それにしてもこの南島の独自の、その年度の文学を網羅していた年鑑の終刊には淋しい思いがする。
先日の朝日の夕刊の連載コラム「人脈記」に、この沖縄タイムスが出版した伝説的な『沖縄大百科事典』の編集チームの主任だった上間常道さんのことが紹介されていた。河出書房の編集者をやっていて、沖縄に帰りこの仕事をしたのだった。この大百科が出たとき、まだ高校生だったという友利仁は今沖縄タイムス出版部にいる。朝日の記事によると、この大百科事典は、―― 千人余りの執筆者が1万4千項目を書く。「沖縄戦」だけで400項目。思いを込めた3年がかりの大仕事だ。スタッフは素人ばかり。上間が河出仕込みのノウハウを一から教えた。「復帰から年月がたち、沖縄のアイデンティティーが問われている時期で、大百科づくりは沖縄の文化運動でした」 沖縄タイムス出版部の友利仁(40)は当時、高校生。「大百科を読む側も県民運動のようだった」とふりかえる。 ― ところで、その友利さんは独力でこの『沖縄文芸年鑑』を4年間にわたり、編集してきた。15年間の歴史の後期をになうことで、南島の文学を、見つめつづけてきたわけだ。ご苦労様でした。これからも、高校時代の熱い思いを忘れることなく、思いのこもった本の出版にたずさわってほしいと思う。現代の出版事情のあまりのひどさに抗して。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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