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October 9, 2006
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カテゴリ:イルカの話

ある中学校1年生の自閉症の男の子のお話です。

その日はプログラム4日目。
快晴の下の海のコンディションも最高でした。
自閉症の子はライフジャケットを着けて海へ。
アテンドはボクでした。

その日の透明度は高く、
3頭のイルカたちが寄ってきてくれて、
1頭はボクたちの周りをぐるぐる回ってくれました。
1週間のプログラムの中で最大の瞬間でした。
が、その子は無表情のまま。
外見的な反応は一切なし。

ま、よくあることです。
周囲が期待する通りにいくとは限りません。
というより、ほとんどの場合は違います。
変化が現れるときも、だいたいは意外な形であらわれます。


イルカが去った後も、
彼はボートに上がりたいそぶりを見せませんでした。
実はそれが一つの変化。
それまでの彼は、海に入ってもすぐに上がりたがっていたのです。

水中を見回すと、海底に青いヒトデを見つけました。
潜って捕ってきて彼に渡すと、
彼は両手を差し出してヒトデを受け取りました。
それも一つの変化。
彼が自ら手を差し出して、ボクからものを受け取りました。


ひとしきりヒトデをイジった後、彼はヒトデをポイと投げました。
フワフワと落ちていくヒトデを見ていると...
来ました。「ジジジジ...」というエコロケーションの音。
「ン!イルカが戻ってきた」と思った瞬間、
1頭のイルカがすごい速さでヒトデをパシッっとキャッチして泳ぎ去りました。
「あっ!もってっちゃった!」
と思うと、イルカはすぐに戻ってきてヒトデを離しました。
直後、次のイルカが飛んできてヒトデをキャッチ。
いつの間にか3頭のイルカが、目の前でヒトデのキャッチボールを始めました。

うわ出た!リーフキャッチ!

イルカたちは、よく水中に漂っている葉っぱや、
ときにはビニール袋を使って、この遊びをやります。
しかも、ちゃんとイルカ同士でキャッチボールをしています。
こんなのはボクは初めて見ました。

おお!... これは... 参加せねば...
 
サッと顔を上げて状況確認。
スタッフのナタリーが近くボートからこちらを見ていました。
晴天。なぎ。微風。ライフジャケット。ウォッチスタッフ....
ボクが求めていた条件はすべてありました。
ナタリーに「行ってくる」と適当にサインを送り、
ナタリーの「?」もお構いなし...

エイ!

ボクは3頭のイルカめがけて潜っていきました。
職場放棄。まあ、ヒドい話です。
でも、諸行無常。一期一会。
自然の中では、心が動く一瞬を大事にすることに徹していたボクは、
迷うことなく、
自閉症の子を置き去りにしてイルカたちを追いかけてしまいました。
始末書ものです。

でもまぁ、これが... 楽しかった...

明らかにイルカたちも、ボクを意識しているのが分かりました。
いつも遊んでくれるバートやチップ。若いオス連中です。
ボクをからかうようにヒトデを見せびらかしながら泳ぎ回っていました。
ボクは心の中から子どもの自分が飛び出してきたかのように、
ものすごい笑顔で、一生懸命イルカたちを追いかけました。

当たり前ですが、どうしてもヒトデを取ることができません。
ボクは試しに海底で待ってみることにしました。
5mほど潜って、空気を3分の2くらい吐き出すと、
ちょうどその場にとどまっていられます。
海底であお向けになって、キラキラ光る海面を見上げながら、
しばらく待っていました。
フト、あの自閉の子の影に気づきました。

「あれ?」

自閉症の子は自分では泳げません。
水面と水中では離れていって当然なのに、
彼はそこにいました。

「おかしい。なんで?」

そう思ったとき、イルカがスーっとボクの真上に来て、
ヒトデを放しました。
ヒトデはフワフワと漂いながら、ボクの手に落ちてきました。


... 体中の血が逆流する思いでした。

一瞬、泳ぎ去るイルカと目が合いました。
イルカは、遊び終わったヒトデをボクに返したかのように、
そのまま泳ぎ去っていきました。

よく整理がつかないまま、
起きた出来事にボー然としながら海面に上がると、
そこに自閉の男の子が待っていました。

ヒトデを見せると、
彼はいつもの無表情で見つめていました。


...(続く)







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最終更新日  October 9, 2006 11:22:54 AM
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