進行性恋愛依存症
久しぶりのかわい有美子さんですが、雑誌掲載の短編「ドラスティック・メタモルフォーゼ」を読んで、この人こんな話書く人だっけ…?としばし混乱。
ひと癖もふた癖もあるやり手の傲岸社長・九鬼と彼を公私共に完璧にサポートしつつも鉄面皮を崩さないクール眼鏡秘書・御巫の、過去の因縁を絡めたミドルサーティンのアダルト・ラブ。
2人の間の緊迫した空気と、それがある瞬間から切なく甘く溶け出していく短編は、作中エ□比率5割超という構成からはあり得ないほどの密度を保った秀作だと思うのですが、本書の後ろ3/4を占める書き下ろしのうち後日談「街に天使の降りる夜」はともかく、過去と現在を錯綜させ短編の補完を目論んだと思われる「報復モラトリアム」は、ちょっと散漫な印象が拭えませんでした。
しかし、読む順番を変えるとせっかくの短編の魅力が損なわれると思うのでそのまま読んでとりあえず星4つはつけたい一冊です。