シリーズ-日比谷編-その7「自校作成問題-数学2」
前回に続き、良問として印象に残った中から一問を紹介します。2004年度第三問であり、こちらから観ることが出来ます。簡潔に題意を要約します。<題意要約>一辺が1の正方形OABCがあり、O(0,0)、A(1,0)、B(1,1)、C(0,1)とする。OABCの内部又は周上の点Pに対し、直線x=1/2で半分に折り、更に直線y=1/2で半分に折る。こうして出来た正方形を2倍に拡大し、元のOABCと重ねる。問1:Pが(3/4、4/5)のとき、最終的にPの座標はどうなるか。問2:一連の操作を終わったとき、元のPと重なる場合のPの座標は?問3:直線l(エル)は点(5/6,5/6)を通りOABCの辺上の異なる2点を結んだものとする。一連の操作の後、前後で直線l(エル)が重なる時の直線l(エル)の傾きmを求めよ。また、前後で平行になる時の傾きmの最大値、最小値を求めよ。但し、直線l(エル)はx軸、y軸に平行ではない。(僕の解答と解説)図解出来ないので、文章に基づいて図形を書いて下さい。(1) P→P1→P2→P3と動くものとする。Pが(3/4、4/5)のときP1は(1/4、4/5)、P2は(1/4,1/5)、P3は(1/2、2/5)となる。(2) Pの位置で変わる。直線x=1/2、y=1/2でOABCを四等分し、右上から反時計周りにア、イ、ウ、エとする。Pの座標をP(x,y)とするとPがアイウエのどの位置にあったかでP3の座標は次のように変わる。アのとき:P(x,y)→P1(1-x,y)→P2(1-x,1-y)→P3(2-2x、2-2y) x=2-2x →x=2/3 同様にy=2/3 従って(2/3、2/3)イのとき:P(x,y)→P1(x,y)→P2(x,1-y)→P3(2x、2-2y) x=2x →x=0 同様にy=2/3 従って(0、2/3)ウのとき:P(x,y)→P1(x,y)→P2(x,y)→P3(2x、2y) x=2x →x=0 同様にy=0 従って(0、0)エのとき:P(x,y)→P1(1-x,y)→P2(1-x,y)→P3(2-2x、2y) x=2-2x →x=2/3 同様にy=0 従って(2/3、0)(3) P(5/6,5/6)のとき、直線l(エル)は一連の操作で次のように変化する。 直線l:y-5/6=m(x-5/6) → y-5/6=-m(x-1/6) → y-1/6=m(x-1/6) → y-1/3=m(x-1/3)重なる時:y=mx+5/6(1-m)と、y=mx+1/3(1-m)においてm=1のとき両者はy=xとなって重なる。平行の時:直線l(エル)はアの部分のみに存在する。さもなければ、二回折り畳んだ時点で直線が二本になるから。最大値は(1/2,1)を通る時でm=-1/2、最小値は(1,1/2)を通る時でm=-2となる。----------------------この問題は、座標の性質がしっかり分かっていないと全く歯が立ちません。また、2回折り畳んだ時に、P点がどのように動くのか、また最初のP点の位置によって動き方が変わることをしっかり把握出来なければなりません。数量的センスと、空間的イメージのセンスが問われます。(1)は具体的にP点の座標が与えられているため、解き易いですが、問題は最終ステップで2倍に拡大する部分です。まあ、日比谷の受験生なら半数は出来るでしょう。問題は(2)であり、P点をア、イ、ウ、エの4通りに分類できないとお手上げです。次に、(1)と違って座標が与えられていませんから、座標の変化を数式で追えないと駄目なのです。結局、場合分けの考え方と、数式でものごとを捉え、条件の変化に応じて数式を適切に変化させられる能力が問われます。更に(3)では、直線の式が折り畳み後にどう変わるかを、数式を変化させて追えないと駄目です。(2)より更に難しいのです。また、問題文が正直なところ非常に分かり難く、日比谷の先生にしてはお粗末な表現力だと思います。一番のポイントは、「平行」になる場合の「直線l(エル)はアの部分のみに存在する。さもなければ、二回折り畳んだ時点で直線が二本になるから」ということです。大半の受験生はギブアップだったことでしょう。同様に、「重なる」場合も、最初と最後の式が合同になる条件で、5/6(1-m)=1/3(1-m)からm=1を導けるか否かです。この問題は大学入試にも使えるレベルであり、教科書レベルの問題を幾らやっても効果はないでしょう。基礎力が無かったらチンプンカンプンであり、頭の柔軟さが求められます。まあ、日比谷としてもそのような生徒を求めているのでしょう。次回も良問を御紹介します。