Groovy / Red Garland ジャズのグルーヴ
グルーヴとは・・・、そしてポール・チェンバースの代表作。グルーヴィー / レッド・ガーランドGroovy / Red Garland録音日:1956年12月14日(4、5) 1957年5月24日(6) 1957年8月9日(1~3)録音場所:アメリカ、ニュージャージーレーベル:Prestige[パーソネル] レッド・ガーランド(p)ポール・チェンバース(b)アート・テイラー(ds)[収録曲] 1.C Jam Blues Cジャム・ブルース2.Gone Again ゴーン・アゲイン3.Will You Still Be Mine ウィル・ユー・スティル・ビー・マイン?4.Willow Weep For Me 柳よ泣いておくれ5.What Can I Say, Dear? ホワット・キャン・アイ・セイ・ディア6.Hey Now ヘイ・ナウ----------これは、ジャズ・ピアノ・トリオを代表する名盤です。このアルバムはピアニストのレッド・ガーランドのリーダー作になっていますが、むしろリーダーはベースのポール・チェンバースではないかと思えるくらいに、彼の存在感が大きいもので、これは、ポール・チェンバースのリーダー作だと言ってもおかしくないものです。このアルバムはジャズ・ピアノ・トリオの代表作品と言えるものですが、ビル・エヴァンス・トリオのものもジャズ・ピアノ・トリオの代表作品だというものがたくさんあります。しかし、それは内容的に、どちらが優れているかというように比べられるものではなく、それぞれが違う個性のある、良い作品であるということです。ここには、レッド・ガーランド・トリオの独特のごきげんなノリがあり、それが、ジャズという音楽の持っている気持ちいいグルーヴ感なのです。「グルーヴ(groove)」とは、本来は「みぞ」という意味ですが、「in the groove」ということで、「最高調」とか「実にうまく演奏する」、「大いに楽しむ」といった意味になります。まさに、これは、このアルバムのタイトル通りグルーヴィー(ごきげん)なアルバムなのです。そして、このグルーヴ感に身をゆだねることで得る満足感こそがジャズの魅力だと言えます。これは、聴く人々を、そんなしあわせな気持ちにしてくれるという名盤です。グルーヴ感とはリズムのノリから生まれるもので、それは独特のものです。そして、それはいろいろな音楽で発生し、よくソウル・ミュージックやR&Bやブルースなどでもグルーヴということを言いますがこのリズムのノリの分野を理論的に表すことはいまだにできていません。しかし、古来からのアフリカなどの民族音楽などで自然に行われてきていることです。打楽器が中心になって同じリズムを延々と繰り返していくうちに、そのエネルギーが大きくなっていき、ある種の高揚感(こうようかん)が生まれてくるというもので、これがジャズの原点でもあるグルーヴ感だと言えるでしょう。ジャズを聴くときや演奏しようとするときに、アドリブのフレーズがどうのこうのなどと言う前に、一番大切なもの、それがグルーヴしているかどうかということです。このアルバムには、そんなジャズの本質であるグルーヴがあるのです。そして、それは、レッド・ガーランドのピアノの素晴らしさはもちろんですが、ポール・チェンバースとアート・テイラーの3人により生まれたもので、特に「Cジャム・ブルース」のグルーヴィーなプレイは傑作中の傑作です。そして、このアルバムは、特別に何か革新的なことをやろうとか、変わったことや、すごいことをやろうといったことはいっさい考えずに、だれかのレコーディングに参加したついでに録音されたものを集めたもので、普段どおりのリラックスした、ごくごく日常的な演奏から生まれたに過ぎないものです。そんなところからも、肩肘を張らずに「ジャズっていいなあ」と単純に感じられるものになっているのだと思います。