カテゴリ:万葉
本日は雨。 秋山の もみちを茂み 迷ひぬる 妹を求めむ 山道知らずも もみち葉の ちりぬるなへに 玉づさの 使を見れば あひし日思ほゆ 秋山の もみちあはれと うらぶれて 入りにし妹は 待てど来まさず 今朝の朝け 雁が音聞きつ 春日山 もみちにけらし わが情痛し 秋山に もみつ木の葉の うつりなば 更にや秋を 見まく欲りせむ 味酒 三輪の祝が 山照らす 秋のもみちの 散らまく惜しも 暮にあひて 朝面無み 隠野の 萩は散りにき もみち早続げ 時待ちて 降りし時雨の 雨やみぬ 明けむ朝か 山のもみちむ 皇の 三笠の山の もみち葉は 今日の時雨に 散りか過ぎなむ 春日野に 時雨降る見ゆ 明日よりは もみちかざさむ 高円の山 雲の上に 鳴きつる雁の 寒きなへ 萩の下葉は もみちせるかも 手折らずて 散りなば惜しと わが思ひし 秋のもみちを かざしつるかも めづらしき 人に見せむと もみち葉を 手折りぞわが来し 雨のふらくに もみち葉を 散らす時雨に ぬれて来て 君がもみちを かざしつるかも めづらしと わが思ふ君は 秋山の 初黄葉に 似てこそありけれ 奈良山の 峯のもみち葉 取れば散る 時雨の雨し 間無く降るらし もみち葉を 散らまく惜しみ 手折り来て 今夜かざしつ 何か思はむ あしひきの 山のもみち葉 今夜もか 浮び去くらむ 山川の瀬に 奈良山を にほはすもみち 手折り来て 今夜かざしつ 散らば散るとも 露霜に あへるもみちを 手折り来て 妹とかざしつ 後は散るとも 十月 時雨に逢へる もみち葉の 吹かば散りなむ 風のまにまに もみち葉の 過ぎまく惜しみ 思ふどち 遊ぶ今夜は 明けずもあらぬか 秋されば 春日の山の もみち見る 寧楽の京師の 荒るらく惜しも わが屋前の 萩の下葉は 秋風も いまだ吹かねば かくぞもみてる 背の山に もみち常敷く 神岳の 山のもみちは 今日か散るらむ 雲隠り 雁鳴く時に 秋山の もみち片待つ 時は過ぎねど 筑波嶺の 裾廻の田井に 秋田刈る 妹がりやらむ もみち手折らな もみち葉の 過ぎにし子らと たづさはり 遊びし磯を 見れば悲しも 雁がねは 今は来鳴きぬ わが待ちし もみち早継げ 待たば苦しも 秋山を ゆめ人懸くな 忘れにし そのもみち葉の 思ほゆらくに
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