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偐万葉田舎家持歌集

偐万葉田舎家持歌集

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2021.08.10
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カテゴリ:銀輪万葉
​​(​承前​)
​​​​​​​​​​​​​​​ 前ページでは薬仙寺​で終わりましたのでそこから続けます。
 前ページ末尾に付しました地図に表示されているように、薬仙寺を出て南へと進むと兵庫工業高校​の前に出る。同校の敷地の西側に沿った道を進む。道は幾分狭くなる。同校敷地の南西角で左折し、突き当りで右折すると和田神社の前に出る。

(和田神社)
<参考>​和田神社(神戸市)​・Wikipedia
    ​和田神社公式サイト


(同上・由緒)
 祭神は、天御中主大神、市杵嶋姫大神、蛭子大神。

(同上・拝殿)

(同上・境内社)
 左から、宮比神社、猿田彦社、秋葉神社。

(同上・弁財天銅像)

(同上・拝殿脇のご由緒書き)

(蕪村句碑)
 境内に、蕪村の句碑がありました。
 安永7年(1778年)3月15日に和田岬の隣松院(現在の和田神社の社務所に当たる場所にあったとのこと。)で弟子たちとの句会を催した時の作だそうな。
  我帰る 路いく筋ぞ 春の艸 (蕪村)

(同上・副碑)
 和田神社を出ると、時刻は午後1時近くになっていました。
 どこかで昼食をとらなくてはならない。
 神戸市営地下鉄海岸線の通りに出ると、JR和田岬駅の駅前。
 コンビニがあったので、ここで氷結したペットボトル飲料を購入するついでにお弁当も仕入れる。
  我が向かふ 先はいくキロ 真夏道 (筆蕪蕉)
 和田神社の蕪村の句にかこつけてヤカモチも一句です。
 先ずは腹ごしらえが先決。
 なお、このコンビニは、JR和田岬駅の木造駅舎を解体撤去した跡地に営業開始したものであるそうな。

(参考地図 和田岬駅周辺)
 ノエビアスタジアム神戸の前まで来る。
 サッカーのヴィッセル神戸の拠点スタジアム。
 ここで、どこか海べりの公園で昼食にしようと、海方向に向かう。

(ノエビアスタジアム神戸)
 今考えれば、ノエビアスタジアムの隣の公園にすればよかったのにと思うが、道路の反対側を走行していたこともあり、暑さで思考停止になってでもいたか、海側へ向かい住宅街の中へ。
 しかし、海側はコンクリートの防潮堤で浜辺に出ることはできず、海べりの公園という構想は空振り。仕方なく住宅街の一角の小さな緑地でお弁当タイムとする。
 ここで友人オガクニマン氏からの着信があったことに気づき電話すると、わが母校の八尾高校が、高校野球の大阪地区予選で公立高校としては唯一ベスト8に残っていて、今日は興国高校に3-0で惜敗、その健闘を称える電話であったことが分かる。母校がベスト8に勝ち残っていたことも、興国に敗れたことも知らなかったヤカモチであったが、「母校愛の強いヤカモチさんだから、ひょっとして今日の試合の応援に行っているのではないかと思って電話した」とオ氏(汗)。
 それも知らずに神戸方面の銀輪散歩に出かけているヤカモチであるから、母校愛も何もあったものではない。しかし、そのことを告げると母校愛強きヤカモチというオ氏に於いて形成されている折角の有り難いイメージを壊すのもどうかと思い、喉元まで出かかった「今、神戸を自転車で走っている。」という言葉は呑み込むこととしました(笑)。
 昼食を済ませ、地下鉄海岸線の通りに出て、西へと進む。
 高松橋で再び兵庫運河を渡る。

(高松橋)
 高松橋の西側たもとで自転車族の男性が一人で休憩して居られた。
 上の写真に写っている自転車は打ち捨てられているもので、男性の自転車ではない。男性のそれは黄色のロードバイクかクロスバイクだったかと記憶する。
 道路の向かい側を見ると誰とも知らぬ人物の銅像。

(八尾善四郎銅像・高松橋西詰め北側)
<参考>​八尾善四郎​・Wikipedia
 この人物は兵庫運河(株)社長で、兵庫運河を完成させた人とのこと。
 帰宅後に調べて、それと知りました。
 先ほどのオ氏との電話の話題が八尾高校で、ここで八尾善四郎像とは、何やら出来すぎの語呂合わせ成立ですが、この時は八尾善四郎とは知らなかったのであるから、そのことに気づくこともなく、単にオヤ?でありました。
 さらに500mほど行くと、新湊川に架かる駒栄橋。

​(新湊川 駒栄橋上から河口方面を望む。)​
 新湊川河口を撮影してみようと、橋の先の辻を左に入って川沿いに海方向に行ってみましたが、行き止まりで、高いコンクリートの防潮堤で視界は遮られていました。
 駒栄橋のたもとに戻る。
 道の向かい側(北側)は何やら工事中。
 この付近は、万葉集に出てくる「真野の榛原」の真野である。
​​​​​​​​​​

いざ子ども 大和へ早く 白菅(しらすげ)
      
真野(まの)榛原(はりはら) 手折(たを)りて行かむ (高市黒人 巻3-280

白菅の 真野の榛原 ()くさ()
        君こそ見らめ 真野の榛原 (高市黒人の妻 巻
3-281

 さあ、皆の者、真野の榛の小枝を記念に折り取って、早く大和へ帰ろう、と言う高市黒人に対して、妻は「あなたは行き帰りのたびに何度もご覧になっているのでしょうが、わたしは初めて見るのですよ、こんなにも美しい真野の榛原を。」と、先を急がせる夫をなじっている。
 尤も、妻は同行せず家で待っていたなどという説もあるから、それだと「行き帰りに見られて、あなたはいいわね。わたしは見てもいない。」という解釈になるか。妻の歌は黒人の文学的虚構だという説もある。
 榛は、カバノキ科の落葉高木ハンノキ。白菅が下草に群生するハンノキの林の光景はどこにもなく、工事中を示す仮柵の列の前を車が盛んに行き交うだけである。
 作者不詳であるが、真野の万葉歌をもう少し紹介して置きましょう。

(いにしへ)に ありけむ人の 求めつつ (きぬ)に摺りけむ 真野の榛原 (巻7-1166

白菅の 真野の榛原 心ゆも 思はぬ我し 衣に摺りつ (巻7-1354

我妹子(わぎもこ)が (そで)を頼みて 真野の浦の
     
小菅(こすげ)の笠を 着ずて来にけり (巻11-2771

真野の池の 小菅(こすげ)を笠に 縫はずして
     人の
遠名(とほな)を 立つべきものか (巻11-2772

 新湊川の旧名は「苅藻川」で、その河口は深く湾入して真野の浦を形成していたという。そして、河口付近の淀みには、水中に杭を打ってその上に板を継ぎ渡した橋(淀の継橋)があったという。

真野の浦の 淀の継ぎ橋 心ゆも
      思へや
(いも)が (いめ)にし見ゆる(吹芡刀自(ふふきのとじ) 巻
4-490

川の()の 厳藻(いつも)の花の いつもいつも
      
()ませ我が背子 時じけめやも(同上 4-491

​​​​​​​​​​​ この歌も490番歌は男歌で491番歌は女歌。
 吹芡刀自という女性が両歌ともに作ったのであれば、これも文学的虚構ということになる。
 上述の新湊川河口を写真に撮ろうとしたのは、この淀の継橋の歌が頭にあってのことでありました。

(参考地図 駒栄橋から須磨海浜公園まで)
 新湊川から西南西2.5kmくらい行くと、妙法寺川に出る。

(妙法寺川河口)
 妙法寺川を渡ると、須磨海浜公園である。
 手前の駐車場から入る。

(須磨海浜公園・駐車場)

(同上)
 銀輪万葉でありますから、須磨の万葉歌も掲載して置きましょう。

須磨の海人の 塩焼き(きぬ)の 藤衣(ふぢころも)

  
間遠(まとほ)にしあれば いまだ着なれず (大網公人主 巻3-413

須磨人(すまひと)の 海辺(うみへ)(つね)()らず 焼く塩の
     
(から)き恋をも (あれ)はするかも (平群女郎 巻17-3932


(同上・東方向、やって来た方向)
 松林の道から砂浜側の道に移動。こちらの方が開放的でいい。
 前方に、須磨浦公園の鉢伏山が見えている。
 浜では、海水浴を楽しむ人の姿も。

(同上・西方向、これから行く方向)

(参考地図 須磨海浜公園から須磨浦公園まで)
 須磨駅の先で、海側の遊歩道は行き止まり。
 JR線を越えて国道2号に出る道は、と探していると、少し戻ったところに地下道がありました。
 国道2号に出て須磨浦公園へ。

(須磨浦公園)
 須磨浦公園に入る。
 この辺りが一の谷。源平の戦の舞台である。

(源平史蹟 戦の浜碑)
​​​​
(同上・説明副碑)
 ロープウェイ乗り場まで行ってみる。
 ロープウェイに乗って、鉢伏山上駅まで行き、海を眺めてみるかという考えが脳裏をよぎり、駅員の方に尋ねると15分間隔で運行しているとのこと。結局それは止めて、駅の売店でガリガリくんを買い求め、それで暑さをしのぐこととする。
 駅舎から少し下ったところに円形の広場があり、周囲を丸くベンチが取り囲んでいる。そのベンチの一角でガリガリくんをガリガリすることとする。
 そこは木陰にはなっていたが、それまで日が当たっていたのであろう。お尻が温かい。
​​​​​​​​​
それでも涼しい風が吹き抜けて行くので心地よい。
​​​​ ベンチの下ではネコが2匹、ぐったりという感じで寝そべっている。
 身体が少し冷えたところで、出発。
 国道2号に出て、100mほど西に行ったところにあったのが平敦盛墓。

(平敦盛塚石造五輪塔)

(同上・説明碑)
※内容は画像をクリックしてフォト蔵の大きいサイズの写真画面でお読みください。
 なお、フォト蔵画面は最初CM画面が覆いかぶさって表示されることがあります。この場合は、当該CM画面にある×印をタップしてCM画面を消すことによって、本来の写真画面をみることができます。
 先ほど、清盛塚で兄の経正を祀る琵琶塚にご挨拶してきたから、これで兄弟双方のお墓参りをしたことになる。
 敦盛塚の近くに青葉の笛を詠んだ歌碑らしきものがあったが、詳細は不明であります。
​​​​
(詳細不明の碑)
 敦盛塚の前では敦盛蕎麦が食べられる店があるそうだが、気づかぬまま国道に戻り、西へ。
 予定では、神戸市須磨区西須磨と垂水区塩屋町との境界をなす堺川の谷を見届けるつもりでいたが、うっかり通り過ぎてしまって果たさずであったのが、少し心残り。次の機会の宿題​​​​とし、地図だけ掲載して置きます。
​​
​​​​​​
​​​​
(堺川の谷)
​ 日本書紀、大化2年正月の条の、畿内の西の境界「赤石の櫛淵」がこの堺川だというのである。
 今日はここまでとします。(​つづく​)​
<参考>兵庫県方面の銀輪万葉の過去記事は​コチラ​。





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最終更新日  2021.08.12 17:34:30
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