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偐万葉田舎家持歌集

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2022.11.16
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カテゴリ:銀輪万葉
​(​承前​)
​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​ 前頁の続きです。
 今日(11月3日)は、中原中也のお墓参りから始めます。
 中也のお墓と言っても、彼個人の墓ではなく、中原家累代の墓であるのだが、それは中也生家跡である中原中也記念館からの道順で言うと、記念館北側道路である県道204号(湯の町街道)を西へ走り、下湯田交差点で右折、北へ進み、次の交差点で左折、湯田自動車学校を左に見て道なりに進むと国道9号の吉敷交差点に出る。
 国道9号を渡って、左斜めに進むと、道は国道435号になる。

(国道9号・吉敷交差点)
 上の写真の国道9号を渡り、黒壁の「かつや」とある建物とその右側の白い3階建て建物との間の道を左に進むと国道435号。
 国道435号を吉敷交差点から400mほど進んだ辺りに、道路左側に「中也の墓」と書かれた小さな標識が立っている。そこで左斜めに戻る形で細い道に入って行くと、右手に墓地が見える。

(墓地入口付近)
 入口右手に、ナンテンの木があり、隣にマユミの木ともう少し大きい木が植えられた場所があり、それを回り込むようにして、左奥に進むと中也の墓の前に出る。上の写真で言うと、写真の中央奥の位置である。奥、右寄りに見える建物の手前左側に三角形に墓石の頭部が見えているのが中也の墓である。
 上の写真は、墓参を済ませた後、中也の墓の方角にカメラを向けて撮ったものである。
 後ろからやって来られた男性が、通り過ぎる時に「中也の墓か?」と声を掛けてくださったが、それはヤカモチが中也の墓の位置が分からずに何処にあるのかと窺っている風に見えたからのようで、墓の場所を教えて上げようという感じの話し方であった。「ああ、今、お参りして来たところです。」とヤカモチ。
 さて、そのお墓はこれです。

(中原家累代之墓)
 墓の脇にたてられている「中原家墓所」の説明碑のアップです。

(同上・説明碑)<参考>​中原中也​・Wikipedia
 説明碑によると、墓石の「中原家累代之墓」と刻まれた文字は中也が山口中学2年の時の書だという。
 この累代之墓の背後に、もう1基の墓石が建っていて、それには「中原政熊夫婦墓」の文字が刻まれている。

(中原政熊夫婦墓)
 中原政熊というのは、中也の母・フクの叔父にして養父であるから、中也からすれば、大叔父にして養祖父ということになる。
 中原政熊・コマ夫妻には実子がなかった。中原医院を開業していた政熊は、兄の遺児であるフクを引き取って養女にしたのである。フクの実父は中原助之。助之は37歳で病没。その一人娘がフクであった。
 中原フクの結婚相手は、軍医であった柏村謙助。従って、生まれた当初は、柏村中也であったのだが、その後、中也8歳の時、1915年10月に謙助は中原政熊夫婦の養子となり、中原に改姓するので、中也も柏村中也から中原中也になったという次第。
 中原中也記念館で貰った「中也と歩く湯田温泉マップ」の「中也のお墓」の項には「僕の眠る『中原家累代之墓』だよ。今でもたくさんの人が来てくれて、僕の好きなたばこやビールなんかをお供えしてくれてるんだ。」と書かれているが、ヤカモチは手ぶらでの墓参。手を合わせただけであったのは礼を欠く墓参であったのかも。

(「中也と歩く湯田温泉マップ」)
※写真をクリックすると大きいサイズの写真画面が別窓で開きます。

 墓参を終えて、来た道を戻り、中也の詩碑と山頭火句碑が並んで建っているという錦川通りに向かうが、一つ手前の北側の通りを走っていたようで、広い通りに出て、そのことに気付く。
 錦川通り戻って仕切り直し。中也の詩碑です。

(中也詩碑)
 もう少し接近して撮影。

(同上)
  「童謡」 中原中也
(1933.9.22.)
  しののめの、
  よるのうみにて
  汽笛鳴る。

  心よ
  起きよ、
  目を覺ませ。

  しののめの、
  よるのうみにて
  汽笛鳴る、

  象の目玉の、
  汽笛鳴る。


(同上・副碑)
 右隣にあるのが、山頭火句碑。

(山頭火句碑)
 ちんぽこもおそそも湧いてあふれる湯  山頭火
 上の中也の詩と違って、こちらの山頭火の句は小学校の教科書には載りそうもない句であります。
 ヤカモチの友人の偐山頭火氏も11年前に湯田温泉を訪ねて居られて、この句碑の写真をブログに掲載されている。
<参考>​九州行乞の旅「旅立ち」​ 2011.5.20.
    ​九州行乞の旅「防府から湯田温泉を行く」​ 2011.5.21.
    ​九州偐行乞の旅 酒・温泉そして駄句​ 河内温泉大学図書館

 同氏の旅は、山頭火の足跡を追っての九州への旅でありましたが、湯田温泉にもその足跡を訪ねて立ち寄られたもの。その折には、中也が結婚式を挙げた西村屋に宿泊されている。
 その西村屋は数年前に倒産して、今は影も形もなくなって、立体駐車場とマンション風の細長い高層建物に変じてしまっているようだ。
 それはさて置き、山頭火関連は上記<参考>の同氏ブログ等をご参照いただくこととし、当記事では句碑を紹介するのみとします。

(同上・副碑)
 錦川通りを北東へ。400m程で権現山の熊野神社である。
 ここは、中也が学校をサボって登ったりしたのだそうな。
 大人になってからも、里帰りをした折などは、息子を肩車したりして登ったこともあったという。

(熊野神社)
 急な石段。一気に上ると息が切れる。

(同上・説明碑)
 説明碑によると、この丘は、山頂に熊野権現を祀る熊野神社があることから権現山と呼ばれるようになったらしいが、標高は40mとのこと。
 湯田温泉街が一望とのことだが、高さがそれほどでもないので、この程度の眺めである。

(熊野神社からの眺め)
 湯煙が温泉街らしい眺めであるが「一望」と言うにはいささか高度不足にて、「失望」である。

(同上)

(熊野神社・社標石と拝殿)

(同上・拝殿)
 拝殿前には、カラフルな提灯が列になって吊るされていて、風が吹くとリズミカルに揺れて面白い動きをする。「恰も魂あるものの如く、提灯が揺れる。」と中也なら言うのでもあるか。
 すると、いのちあるものの如く青い葉がひらひらと舞い散って来た。
 見るとそれはオオシロオビアオシャクという大型の蛾であった。命あるものでありました。まあ、木の葉だって命あるものではありますが。地面にとまって、じっと動かずにいるので、木の葉にとまらせて境内の片隅の草むらに移動させてあげました。
 長門峡のヘビではないが、人に踏まれてもいけないので(笑)。
 さて、ヘビでも蛾でもなく、この権現山は白狐伝説にまつわる地でもあるので、以下に紹介して置きます。

〇白狐伝説

 昔々、湯田の権現山の麓のお寺の境内に小さな池がありました。

 その小池に、毎晩一匹の白狐が、

 傷ついた左足をつけにきます。

  この様子を見ていた和尚さんが、

  不思議に思い、その池の水をすくってみると温かかったのです。

  そこで池を深く掘ってみると、

  熱い湯がこんこんと湧き出るとともに、

  薬師如来の金像があらわれたのです。

 この仏像は拝んで湯あみをすると

 難病も治る「白狐の湯」として評判となり、

 温泉は栄えるようになったそうです。

​​​​​​​​​​​​​
(同上・本殿と拝殿)
 本殿の裏にかけて小径があって、白狐の小径とある。

(白狐公園と白狐の小径の標識)
 白狐の小径を辿ると、隣の一段高い山、障子岳に通じているのかもしれない。その障子岳からなら、湯田温泉街が一望なのかもしれないが、展望所があるという保証もないので、小径はパス(passとpathの洒落のつもり)であります。その流れで白狐公園もパスしてしまったが、今思うと、白狐伝説の寺や池がその公園にあったのであれば、パスミスであったことになる。
 元の道に戻って、道なりに進むと山口市役所の前に出た。

(山口市役所前、奥の塔は山口カトリック教会・ザビエル記念聖堂のもの)
 市役所の前は工事中であったが、この付近が山口師範付属小学校跡地の筈であるが、何処と確定できるものは見つけられませんでした。
 中也は地元の下野令小学校(現・湯田小学校)に通うが、成績が優秀であったので、両親が山口師範付属小学校に転校させたようである。
 1918年、中也が小学校5年生の頃のことである。ここでも中也は成績優秀で、ひょうきんなところもあって、クラスの人気者であったらしい。
 さて、ザビエル記念聖堂に向かいます。1976年10月に、山口市歴史民俗資料館での中原中也展を見に出かけた際にザビエル記念聖堂に立ち寄っているのでそれ以来の訪問である。尤も、その時の聖堂は1991年に火災で焼失しているので、新しい聖堂は初訪問ということになる。
 ザビエル記念聖堂は山口市消防本部の先を右に入り坂道を上り切った高い場所にある。記憶では坂道を上ったというのは欠落しているが、46年も昔のことであるから、当然か。

(ザビエル記念聖堂)※​山口ザビエル記念聖堂​・Wikipedia
 目の前に現れたのは、近代的と言うか、現代的と言うか、威圧するような巨大な聖堂。旧聖堂の姿ははっきりとは思い出せないのであるが、もっと優しくエレガントな、伝統的スタイルの、礼拝堂らしき姿であったような気がするので、少なからず失望と言うか、違和感を覚えました。

(同上・説明板)
 1階が展示館になっていて、2階が礼拝堂になっている。
 展示館は有料になっている。
 坂道を上って2階の礼拝堂に入ろうとしたら、出口と表示されていて、入り口は1階の展示館の方になっている。
 坂道を下って1階から入場。
 館内は撮影OKなので、パチリ、パチリと。

(同上・展示1)
 ジョルジュ・ルオーの「キリストの顔」とヨーロッパ各地のミサ典書の展示であります。

(同上・展示2)
 十字架が隠されている燈籠など、キリスト教受難の時代の色々なものも展示されている。

(同上・展示3)
 受難時代のそれと言えば、踏絵ですな。

(同上・展示4 踏絵)
(同上・展示4 踏絵の説明)
 紙踏絵というのもあったのですな。

(同上・展示5 紙踏絵)

(同上・展示5 紙踏絵の説明)
 キリシタン大名の大友宗麟の書状なども展示されている。

(同上・展示6 大友宗麟の書状など)
 左から、書状、所領預ヶ状、感状である。

(同上・展示6 宗麟の書状)

(同上・展示6 宗麟の所領預ヶ状)

(同上・展示6 宗麟の感状)

(同上・展示7 屏風絵)
 ザビエルの屛風絵です。描かれている絵の説明は下掲をご参照下さい。

(同上・展示7 屏風絵説明)
※上掲と下掲は、写真をクリックして大きいサイズの写真でお読み下さい。

(同上・展示8 フランセスコ師の善行の評判)

(同上・展示9 島原の乱の砲弾など)
 島原の乱の砲弾、十字架が描かれたお椀、十字架が刻印された瓦。

(同上・展示10 旧ザビエル記念聖堂の鐘)
 1991年に焼失した旧ザビエル記念聖堂であるが、鐘は焼けずに残ったようです。
 旧聖堂の内部の写真も展示されていて、46年前にヤカモチが見たのはこれであったかと撮影しましたが、ガラス張りの額に収められたその写真は、ヤカモチのカメラワークが悪かったようで、ガラス面の反射などもあって使えない写り具合にて没としました。
 2階の礼拝堂へと行きましたが、この日は、オルガンコンサートが開催されるとあって、その準備中のよう。
 コンサートが終わるまでは礼拝堂内部は撮影禁止とある。ということで撮影せずです。
 ザビエル記念聖堂は亀山につながる高台の一画にあり、聖堂の前庭に出ると、正面に亀山山頂へと上る階段が見える。
 聖堂の敷地からの出入り口は、上って来た坂道と亀山公園へと通じる目の前の階段との二つだけのよう。階段を上って亀山公園へと向かう。
 しかし、今日はここまで。
 続きはページを改めることとします。(​つづく​)
​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​

<参考>銀輪万葉・​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​中国、四国篇は​コチラ​。​

​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​






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最終更新日  2022.11.22 20:42:43
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