|
カテゴリ:小説家、坂上琴
桐野夏生「抱く女」(新潮社)読了。
1972年の9月から12月の東京・中央線沿線の吉祥寺、新宿などを舞台に、20歳の女子大学生、直子がさまざまな男とかかわりながら、自分の生き方を模索していく。 今から40年以上昔の設定だから、ほとんど時代小説みたいなものだ。当時の若者のファッションや、ジャズ喫茶のアルバイトの時給が300円など、忘れていた時代が作品の中によみがえる。連合赤軍による総括など、当時の時代背景もちりばめられている。 桐野さんは1951年生まれだから、自身の学生生活を振り返った自伝的な作品なのかなとも思う。さりげない一文を描くのに、たいへんな考証が加えられているのがにじみ出ている作品だ。 「OUT」などの作品で知られる著者だが、この作品では、大した事件が起こるわけではない。いささか退屈だが、こんな書き方もあるんだなと、最後までページをめくった。大仰な事件を提示しなくても読ませるのが、筆力というやつかもしれない。 私は学生相撲を描く作品を書き上げたものの、日の目を見ずにいる。この作品を何とかしなくちゃと思う反面、しばらく寝かしておいた方が、ほどよく発酵して、味わいが増すのではとも思う。 「抱く女」は、私にとって良い意味で、サジェスチョンを与えてくれる作品だった。 という余韻に浸りながら、中央図書館に行った。文学界の2月号を手に取ると、桐野さんの講演記録が載っていた。曰く「ミステリーを書かなくなって読者が減った・・・」。このクラスになると、売れる作品よりも書きたい作品が書けるようになるんだな、と感心した。 私の場合は、売れようが売れまいが、とにかく次の作品を書くしかありません。自転車操業というやつですね。 にほんブログ村 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2017.01.17 09:29:06
コメント(0) | コメントを書く
[小説家、坂上琴] カテゴリの最新記事
|
|