過去のことを忘れずに生きている私の中で抜け落ちている記憶がある。
それは祖父母宅から自分の実家へ戻った時の記憶だ。

ぼんやり覚えていること
祖父が末期ガンで入院した。祖母は付き添いのため夜遅くまでいなかった。
祖母が帰ってくるまで実家で待っていた。
母が作ったおにぎりを食べながら涙がこぼれた。
なんで泣いているの？と母に詰問された。
「ばあちゃんが来ない・・」そう言ったら激怒された。
祖母が迎えに来たのか、はたまた来なかったのか全く記憶にない。

いつの日からか夜は実家で寝ていた。
夜祖母に送られて夜道を歩く。
たった数十メートルが怖くて仕方なかった。
待っているのは絶望だけだったから


伯母に電話して当時のことを聞いた。
曾祖母に痴呆が始まっていて徘徊していたこと
祖父の入院・手術が11月頃だったこと
手が回らなくて曾祖母は病院に入れたこと
叔父一家しかいなかったあの家に私を置いておけなかったこと


私がいつも11月になると不安定になるのは
記憶すらも消し去りたいほどの恐怖

親に捨てられたと言われ続けて過ごした祖父母の家
祖母はよく言っていた。
「私達がいなかったらお前は死んでいたんだ。」
その家にすら居場所がない。
戻されるのは「私を捨てた両親の家」
そこに居場所があるわけがない


私はどこへ行けばいいの？


どの家になら私は住んでいていいの？


また捨てられるの？


どうして私ばかりが捨てられるの？