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カテゴリ:読書
今年は夏暑すぎて、読書量激減。 というか、やっぱり昨年ちょいと 心身ともに変調をきたしたせいか、 本をじっくり読む、ということが、 なかなか出来ずにいたが、 そろそろ欲望がムラムラ、 そこへ知的好奇心を満たす本が登場。 「生物と無生物のあいだ」福岡伸一 著者は、京都大学卒業後、ハーバード大 医学部研究員、京都大学助教授等を経て、 分子生物学専門の青学の教授である。 分子生物学と聞くと難しそうで、 とっつきにくいことこの上ない。 内容はDNAや細胞膜、遺伝子、 もっと専門用語が沢山出てきて、 決して素人に分かり易く簡単に、 かみくだいたりはしていない。 ただし、きちんと読んでいけば、 詳細に丁寧に描写してあるので、 同じ実験室でその現場にいるようだ。 本当は過酷で大変な作業だろうけど、 自分が分子生物学のポスドクになった気分。 これはなかなか面白いもんです。 そして、これに描写されている分子達、 それの集合が今これを読んでいる自分! これに気づいた時、思わず体中震えた。 生まれてからこのかた、本人は勝手に 喜んだり怒ったり哀しんだり楽しんだり。 その間も黙々と体中の細胞はその個体を ダイナミックに作り変え続けている。 自己複製とは何か、生命とは何か、 生きる、でなく、生きているとはなにか、 目を覚まさせてもらったぞ。 理系の人の文章は簡素で分かり易いが、 この人のはそれだけではない。 語彙が多い人はそれを乱用するが、 この人は最適に最小に使っているから、 読み易く、でも詩的でうまい。 ボストンやニューヨークの描写は、 科学者でなく、一流の随筆家のようだ。 随所に色々なエピソードが描かれるが、 確かに本当によく勉強していることが、 それらからもよく分かる。 このような文章が書けるようになるには、 単に結果を望む受験勉強と研究だけでなく、 その時その時に確実な積み重ねがあるからだ。 39ページのアンサング・ヒーローの箇所、 この言葉にたどり着くのも凄いし、 辞書を読み込むほど英語も研鑽したのだ。 53ページのbehaviorの訳についての感慨、 京大という環境のなせる業もあるが、 こういう感性を持っているということが、 このような文章を書ける訳なのだ。 今年のやんちゃの白眉本! 生物と無生物のあいだ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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