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カテゴリ:読書
「冷静と情熱のあいだ」二冊目、
江國香織の赤い装丁のROSSOを開く。 辻仁成のBLUはきめ細やかに、 しつこいばかりに心象が書き込まれている。 それとは対照的に,ROSSOの文体は、 淡々としてあおいの日常が描かれる。 色分けとしては、ROSSOは赤で情熱、 BLUは青で冷静のはずだが、 中身は逆のパターンで担当したようだ。 結果、この分担は成功している。 あおいの自分を罰するかのような、 色みの少ない静かな生活の連続。 非の打ち所のないほどの男性に、 有り余るほどの愛情を注がれても、 最終的には受け止められない。 その心のうちのさびしさ侘しさといったら、 想像するに恐ろしいほど悲しい。 回りに気遣う優しい人々がいる。 それにもかかわらず、 途方もない孤独にたたずむしかない。 その日が近づくにつれ、あおいの心は、 順正に引き戻されて行く。 そして、やはりあおいも行ってしまう。 約束の日の約束の場所に。 三日間の順正との日々を胸に、 また元の静かな生活に戻るあおい。 新しい愛してくれる人の胸に、 飛び込めばいいのに、と普通は思う。 でも、人の心はそれほど単純でない。 あおいは底知れない孤独と共に、 意志を通して自由でもあるのだ。 冷静と情熱がすれ違ったゆえに 出来上がった素晴らしいラブストーリー。 とりわけ寒い夜に、あったかくして、 一人お読みくださいませ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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