カテゴリ:許冠文&Mr.Boo!
立秋から霜降に掛けて30夜開催した「Mr.Boo! マイケル・ホイ(許冠文)祭」。16年に公開された台湾映画「一路順風(ゴッドスピード)」のみDVDが未着で紹介出来なかったが、やっと先日届いたので観てみた。
喜劇王・マイケルの出演作はやはり大半がコメディ作品なので、真面目な役柄は97年公開の米国・香港合作「中国匣(チャイニーズ・ボックス)」以来かもしれない。いや、06年の「寶貝計劃(プロジェクトBB)」でもマイケルは哀愁漂う泥棒役を好演してたっけ。今作でも20年前に香港から台湾に渡ったしがないタクシードライバーを見事に演じており、マイケルの新たな魅力が引き出されていた。 ちなみに今回購入した台湾のDVDは特典映像付の2枚組で、マイケルの撮り直しシーンや未公開シーン等も観られていと嬉し。日本でDVD化されなかったのが残念だ。 納豆(ナードウ)演じる納豆はチビでぽっちゃりした無気力な青年で、バイクを盗もうとしていたところを店主に見つかって逃亡したりという無気力な毎日を送っている。そんな納豆は新聞広告で見かけた配達の仕事に付く。仕事は単純で数週間に一度、台北から南部へ電話の指示どおりに物資を届けるだけ。早朝に出発して正午に到着、夕方には台北に戻る。南部の荷受人は戴立忍演じる黒社会のボス大寶の親友である、庹宗華演じるこれまた黒社会のボス・庹哥で、納豆が届ける商品はタイのゴールデン・トライアングル産のヘロインだが、納豆自身は配達している商品の中身は知らない。配達方法はというと、道端でタクシーを拾い、目的地で降りて商品を顧客に渡して元の車で戻ってくるというもの。 納豆は新たな商品を運ぶためタクシーを探していたところで、マイケル演じるタクシー運転手・老許からのしつこい客引きにあい、根負けして老許のタクシーに乗り込んで南部を目指すことに。老許こと許英傑は90年代に香港から来て台湾人女性と結婚し、林美秀演じる奥さんの尻に敷かれながらタクシー運転手をしている。 南部への道中、何も知らずに人だかりを覗いて見知らぬヤクザの親分に香典を出す羽目になったりしながらも、二人を乗せたタクシーは目的地に到着。納豆は指定場所である廃墟と化したボーリング場へ赴く。庹哥に商品を渡すと早速庹哥の手下である林道禹演じる阿財がブツを注射し、本物であると確認した。そこへ納豆の連絡用の携帯に大寶から庹哥に電話が入り、二人が話しているところへ外にいた老許を人質に取った庹哥の手下である陳以文演じる阿文がやって来て庹哥に銃口を向けた。同じく庹哥の子分である梁赫群演じる小梁と阿文は庹哥と阿財を撃ち殺し、納豆も流れ弾を腿に受けて負傷してしまう。阿文と小梁は負傷したままの納豆と老許をトランクに押し込めてベンツで逃走した。 どのくらいの時間が経ったのか、トランクを開けられて渡された新たな連絡用スマホに大寶から連絡が入り、二人は再びタクシーに乗り込んで知らない道を走り続ける。一方、大寶の前に連れ出された小梁と阿文、小梁は銃殺され、阿文は大寶の部下で運転手を務める吳中天演じる小吳により、被らされたヘルメットの上から鋸を挽かれて血まみれになったうえ大寶から銃を突きつけられるも命は助かった。 陳玉勳演じる獣医に傷の処置をしてもらった納豆を乗せ、老許が運転するタクシーは再び走り続ける。納豆の携帯に大寶から連絡が入り、汪口湖村へ向かう二人。小吳の運転する車で夜の街を走行していた大寶だったが、小吳は急加速してハンドルを大きく切った――。 マイケルの役名が「許英傑」なのが嬉しい。ホイ兄弟の三男・リッキー(許冠英)と四男・サム(許冠傑)を連想させるこの名は、鍾孟宏(チョン・モンホン)監督の遊び心か、ホイ兄弟に敬意を表してのことなのだろうか。 台湾映画ということで台詞は勿論國語(中国語)。マイケルの台詞も國語だが、たまに広東語で愚痴をこぼすシーンもあったりして。國語の発音でNGをかなり重ねたこともあったとか。老許が語るシーンが多くて見応えは十分なのであるが、個人的には中国語がサッパリ分からない(学生の頃に第2外国語で1年勉強した程度)ため、ほとんどの台詞は理解出来なかったことが悲しい。 今まで台湾映画に興味がなかったため、マイケル以外の役者達が誰も分からず、これまた悲しい。しかし皆さん達者な演技で、非常に興味深い作品だった。老許の奥さんが本当にチラッとだけ登場する以外、出演者は全て男性なのも硬派で実に良い。大抵の映画は取ってつけたように無用な恋愛シーンが入ったりするからなぁ…。 納豆という日本人には親しみやすい名前の方は芸人さんで、司会や役者としても活躍されているとのこと。昨年1月に脳出血を起こして休養していたが、今は復帰されている模様。どうぞお大事に。 主題曲は谷村新司さんの “昴”。ラストへ向かう重大なシーンに、日本語でそのまま壮大に美しく流れる。谷村さんは先月惜しくも亡くなられたが、改めて偉大な歌手だったなぁと思う。 今作は16年11月に台北で開催された第53屆金馬獎ではマイケルの最佳男主角(最優秀主演男優賞)を含む8部門にノミネートされた他、香港國際電影節協會主催の第11屆亞洲電影大獎(Asian Film Awards)でも最佳男主角を含む3部門でノミネート。そして第17屆華語電影傳媒大獎ではマイケルが最佳男主角、納豆が最佳男配角(最優秀助演男優賞)を受賞 更に17年4月に開催された第36屆香港電影金像獎では作品が最佳兩岸華語電影(最優秀中国・台湾作品賞)を受賞 同じ17年には香港電影導演會主催の香港電影導演會年度大獎で榮譽大獎、香港電影編劇家協會主催の香港編劇家協會年度大獎でも榮譽大獎を受賞した その後も21年に第15屆香港藝術發展獎で傑出藝術貢獻獎、22年には第40屆香港電影金像獎で終身成就獎を受賞。そして今年の第41屆香港電影金像獎では「風再起時」で最佳男配角を獲得 香港電影界のレジェンド・許冠文の今後益々の御健康と御活躍を祈るばかりである。 一路順風 Godspeed 2016年11月18日(臺灣) 2017年1月5日(香港) 出品人 : 廖世芳、林添貴、胡青中、趙依芳 監製 : 葉如芬、曾少千 導演 : 鍾孟宏 編劇 : 鍾孟宏 制片商 : 本地風光電影股份有限公司(3 NG Film)、台北影業股份有限公司(Taipei Postproduction)、阿榮影業股份有限公司(Arrow Cinematic)、華策影業(天津)有限公司(Huace Pictures (Tianjin)) 演員 : 許冠文、納豆、戴立忍、吳中天、庹宗華、陳以文、林道禹、梁赫群、林美秀、陳玉勳 音樂 : 曾思銘 主題曲 : 谷村新司 語言 : 國語 票房 : NT$ 5,405,875 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2023.11.07 14:47:29
コメント(0) | コメントを書く
[許冠文&Mr.Boo!] カテゴリの最新記事
|
|