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多くの皆様の御蔭で臓器移植法改正案が衆院可決されました。一刻も早い参院の採決が待たれます。舛添大臣への要望署名を頂いた一万人の方々と 国会提出した移植法改正の請願署名をしていただいた5万人以上の方々に心より御礼申し上げる次第です。
あらためて、整理すると、これまで改正案として臓器移植を一番容易にするA案、ほぼ現行法のまま、対象年齢を15歳から12歳まで引き下げるB案、脳死判定をより厳格化し移植治療を後退させるC案の3案、今年に入り自民党の根本匠議員、民主党の笠浩史議員らが折衷妥協案としてD案を提出しました。 97年日本で初めての臓器移植法が法制され、本人の書面での提供意思の表明と家族の同意があれば、日本でも脳死となった人から臓器を取り出して移植を行うことが可能になりましたが、この条件の提供者はほとんどなく、これまでの12年間での脳死移植は81件しか行われていません。現在、13000人近くが臓器移植を待っている状態です。もう一つの大きな問題は現行法では15歳未満の臓器提供は認められていないため移植治療を必要とする子どもは、高額の費用を負担し、それが無理な場合は辛い思いをして募金をあつめ、海外で移植を受けるか、更には健全な生体を傷つける非人道方法ともいわれる提供ドナーに後遺症が残る危険を冒す生体移植を受けるしかないないのです。 これらの点を問題視して提案されたのが、年齢制限をなくし、本人の意思表示がなくても家族の同意のみで臓器提供を行うことができるとしたA案です。A案は本人から生前の意思表示が無かった場合は、臓器提供の意思ありと推定されるため、脳死移植は大幅に増える可能性が大きいのです。また、A案はあくまで家族の同意が前提となるため、臓器提供者に年齢制限を設けていません。A案では本人があらかじめ臓器提供を拒絶する意思を表明できる上、本人の意思にかかわらず家族は臓器提供を拒否できるため、「どなたにも意思に反したことを強制しない」とA案の提案者で自ら生体肝移植のドナーとなった経験を持つ河野太郎議員は述べています。 一方C案は、脳死といわれつつ長期間心停止に至らない例から現行の脳死基準をさらに厳格化を進め更に4案の中で唯一生体臓器移植を親族間のみに限定する規制を付帯しています。また臓器移植以外の医療が十分に施されていない問題を指摘するが、移植が安易にできる法律が施行されない限り、システムの改善の一歩は踏み出せないことから、改正が逆行してしまうのです。 改正反対論では、まるでA案では、脳死患者はすぐにドナーになるように誤解されていますが、もし脳死と判定されても家族の同意がなければ絶対に臓器移植は行えないのです。更にその患者は医療保険で引き続き治療を受けることができます。一部のマスコミではその辺を伝えず、脳死患者家族に不安を与え、あおって報道しているようにしか思えません。 B案は現行法の年齢制限を15歳から12歳に下げるもので、D案は現行法から年齢制限を削除するというものです。いずれも、国内では移植を受けられない日本人の子どもが、海外で移植を受けている事態にのみ対応した案ですが、実際、移植が必要な患者は、子ども1に対して大人10くらいの割合でD案では子どもに関しては微々たる改善、大人に関しては進歩がないのです。 数ヶ月間いろいろ学び、聞き、考えた結果、本来この移植議論というか、もっと前に解決を図るためには、臓器移植法を一刻も早く改善するためには論点の分別つまり、臓器移植と「脳死」の議論は分けて考える必要があったのではなかったのでしょうか。 関わった者として緊急を要する臓器移植の論点は、死生観ではなく、死後の臓器摘出に本人の同意を絶対に必要とするか否かということで審議もそれに絞ってほしかったと思います。人権の最も基本は本人の意思であり、どういう場合に本人同意を確認できなくとも臓器を提供してもらえるのかということなのです。もちろんA案が一番多くの移植を必要とする患者を救うことができるので、国際ルールに立てば、今回可決された改正案以外に選択肢はない。今はこれしかないと信じています。 また法案が完全に可決され施行されても、全国民がドナーカードを持ってほしいと願ってもいます。イエスでもノーでもいいのです。アンケートによれば常に50%以上の国民が提供していいと言っているのです。交通事故負傷者数は年間100万人を超えます。そして事故の場合、最も深刻なダメージをこうむるのは頭部です。現に死者の場合はその受傷部位は頭部が一番多く、重傷者の場合でも、脚部に次いで多い割合を占めています。交通事故の犠牲者が年間100万人を超えるという事は、1時間約120人、1分に約2人。もちろんその他の原因により人は誰でも脳死の状況になる可能性をもっています。そして不幸にして交通事故で亡くなった方の10人に2人が提供してくれれば、8割がノーだとしても移植を待つほとんどの方は助かるといわれています。もうひとつの観点からは、万一の際、残された家族に、提供者としてどうするのかの決断をさせるのはかわいそうですから是非ともドナーカードを持っていただきたいと思います。 国会で万事可決された後は、移植コーディネーターの育成、医療や医師の認識と技術や対応の強化、速やかな臓器移送方法や情報やすべてのシステムの向上や構築などがある筈で、まだ道のりは長いかもしれませんが、大きな一歩を踏み出したことに間違いありません。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
Jun 21, 2009 01:21:37 PM
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