テーマ:☆詩を書きましょう☆(8465)
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知覧茶
知覧茶をいただいた 黒部岳で遭難した娘さんの香典返しにと 「絵本の切り絵を作るとき知った特攻隊に 特別な想いを寄せていた娘の供養です どうぞ知覧茶を」と添え書きがあった
娘さんは切り絵作家で 「ほたる」という絵本の切り絵を依頼され 何度も知覧に足を運んだそうだ
知覧は特攻隊の基地のあったところ ー昭和二十年 食堂を営むおばさんのもとへ 生きて帰れぬ旅立ちをする特攻兵が 最後の夕食に立ち寄っていた 一人の兵士が言った 「おばさん 僕が死んだらきっと 蛍になって ここに戻ってくるからね」 次の夜 一匹の蛍が ふわっと食堂に舞い込んだ あの特攻兵だ とみんな涙したー
娘さんの遺作展の中でひときわ目を引く「ほたる」 黒い人影のシルエットの真ん中に ふんわり浮かぶまるい蛍のひかり 特攻兵の魂か 特攻兵たちに心を寄せていた娘さんの魂か 特攻兵たちも若くして命を落とし 娘さんもまだ二一歳の若さで命を絶たれた お母さんの気持ちはいかばかりだったろう
ふくよかな香りの知覧茶を飲むたび思い出す 蛍と特攻兵と 切り絵作家の娘さんとお母さん
広大な緑の海原のように広がる知覧茶畑 風に波うち 春を呼び寄せている
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