4月28日は千葉詩人会議の日で私も出席しましたが、終了後に上手さんの詩
『しおり紐のしまい方』が三好達治賞を受賞したことをお祝いして千葉詩人会議で祝賀会を開きました。受賞のことは以前にお聞きしましたが突然祝賀会のお話を聞いたのですが、他ならぬ上手さんの祝賀会とあって、息子にはメールで今日はこれこれの理由で遅くなるからと伝え、参加することに決めました。
上手さんは同じ詩人会議のメンバーですがすぐれた詩人であり、私の好きな詩人でもあるからです。
駅近くの王将の一角をメンバー9人が陣取って、詩論をぶつけあったり、飲んだり食べたりの楽しい時間を過ごしました。
ここに少しfc2に書いていらっしゃる上手さんのホームページから引用して『しおり紐のしまい方』を紹介しようと思います。
★ ★ ★ ★ ★ ★
詩集『しおり紐のしまい方』から
詩集『しおり紐のしまい方』は2018年6月12日(単に誕生日です)
に版木舎より刊行された著者70歳の時の第6詩集です。翌年2019
年に第14回三好達治賞を受賞しました。発表時の「選考理由」を
以下にコピーしておきます。
「『しおり紐のしまい方』は種々の<あなた>との対話の物語であ
る。心の奥深くに棲む憧れの人、もう一人の自己、妻や家族、自
然、神様、危うい時代等との対話を通して、人生や生活に対する
作者の優しい愛の歌が聞こえてくる。愛することへの強い静かな
意志。柔らかな心。ユーモアがあって、謙譲で、詩とは、元来こ
ういう豊かな、魅力に富んだものであったかと改めて認識させら
れる。序詞「詩集」、「貴婦人」等、幾たびも読みたくなる傑作
である。」(この文章に署名はありませんが、選考委員は以倉紘平
(選考委員長)、池井昌樹、高橋順子(以上詩人)、岩阪恵子
(作家)の各氏でした。)
編集は柴田三吉さんにお任せし、印刷製本の具体化は村上和生さ
んにお願いしました。表紙カバーは、前作『香る日』を除いた全
ての詩集で絵をいただいている百瀬邦孝さんです。白ページが少
なくなるようケチって片起こしとする一方で、書名にあやかり初
めてしお紐を付けるぜいたくをしました。ちょうど古希の刊行と
なりました。
カバー装画 百瀬邦孝
..................................................................
★詩集の構成(目次)★
序詩 詩集
1
鹿鳴
言葉のすみか
帰宅途中
どこにも行けないもの
轍のある草原
向こう岸
白夜
罪のひとつも
しおり紐のしまい方
2
冬の写生
飲まず食わずで
隊列のはなし
まどろみの時
経歴書
手袋と春
宛名は「あなた」
貴婦人
3
雨の日の写真
変形
詩人の声が裏返る
大きな本
きのうの樹
やり直し
木づち
あとがき
................................................
★序詩 詩集
紙を繰る音がきこえる
誰かが私を読んでいるのだ
だがどこが開かれているのかを
私は知らない
読み終えられたページは束ねられ
暗がりで眠りについている
広げられた見開きだけが「今」を生き
世界をまぶしがっている
灯火の下 文字たちは
煮え立つ料理のように香りたち
書いた者の想いをたぎらせる
食卓を覗き込む影は幸せそうだ
書いた人がいなくなってから
ほんとうの本の命は始まるのだが
無言でうずくまり続ける私の暗がりに
誰かが訪れて灯をともすことなどあるのだろうか
それでも紙をめくる音に目覚める時がある
誰が読んでいるのか分からないのに なぜか思う
ああ あなたでしたか
そして再び深い眠りに襲われる
以下略