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HANNAのファンタジー気分

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March 1, 2011
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カテゴリ:映画と原作
 3D初体験でした。原作「ナルニア国ものがたり」シリーズの中で私の最も好きな『朝びらき丸東の海へ』の映画版「第3章アスラン王と魔法の島」です。

 3Dは目が疲れるかなとか、酔うんじゃないかとか、心配でしたが、観てみるとヘンなものではなく、席が後方だったせいか、コワイほど間近まで立体的!とは思いませんでした。
 私はその昔、ディズニーランドで3D映画のハシリ「キャプテンEO」(最近、復活しているそうですね)を観たのですが、その時、マイケル・ジャクソンが手が届きそうなぐらい迫ってきたのを今でも覚えています。あの驚きに比べたら、今日のは予測済みだったかな。つまりほんとの初体験ではなかったかも。

 以下、多少ネタバレです。
 映画の内容も、まあまあ良かったです。というのも、前作「第2章カスピアン王子の角笛」が血なまぐさいばかりでちょっとがっかりだったので、かなり心配していたのです。
 ストーリーの流れはちょっと変わっていましたが、要所要所のエピソードは原作と離れないよう苦労したな、という感じです。ユースチスのあの、現代的・いい子ぶり・神経質な性格や、彼が竜になるところの驚き・悲しみ・改心などは期待を裏切りません。のうなしあんよ、魔法の本、眠り続ける3人の貴族なども、なるほどなるほどという映像です。

 何より、私の大好きなリーピチープがCGとは思えないなめらかな動きで大活躍、最後は剣を捨て、りっぱにアスランの国へと旅だって行きました。毛皮の色が茶色だけど、そんなことは気にならなくなってしまいました。原作の挿絵でも黒かったり白かったりしますからね。
 挿絵といえば、エンドロールの最初のところで、原作にあるポーリン・ベインズの挿絵が出てきて、なつかしくも感動的でした。映画が終わったところで、原作挿絵で物語全部を振り返ることが出来るんです。

 原作のストーリーは、リープだけでなくカスピアンも、「東の海のさいはてへ行きたい」という強い望みを持っています。さすが世界の海を制覇した大英帝国ならではの探検魂、そしてそれを上回る宗教的な情熱があるのだと思います。
 日本の東方浄瑠璃浄土とかニライカナイを目指す信仰もそうですが、西ヨーロッパ特にイギリスやアイルランドには西の海の彼方に常世の国や楽園を求めるという伝説があって、聖ブランダンの航海などは、西と東の違いはあれど、朝びらき丸の旅にとてもよく似ています。
 しかし、神に祝福された「約束の地」を探求して未踏の海をゆくというのは、なかなか現代にはピンと来にくい情熱ですよね。しかも王たるカスピアンが自国をあとにして海に乗り出しちゃうなんて。もちろん父王ゆかりの行方不明の7卿を捜すというのが建前ですが、カスピアンの心にはそれ以上に彼方への想いが燃えていて、行けば行くほどその想いはつのるのです。

 海はすきとおり、太陽はいよいよ燃え、海水は甘くなり、というこの世ならぬ旅路の驚異によって、魂が浄化されるような、そんな展開が原作の魅力ではあるのですが、映画の方は、探索の旅にもっと現世肯定的で健全な理由付けをしています。
 すなわち、不当に連れ去られた離れ島の人々を救いだしナルニアに連れ帰ることです。嵐に翻弄され船長が引き返してはどうかと言ったとき、カスピアンは奪われた家族を連れ戻すために行かねばならぬという態度を示すのです。
 そして、原作では途中で立ち寄った不思議な島の一つにすぎなかったくらやみ島が、映画ではすべての元凶、悪の巣窟となり、それを打ち破った時、人々は救助され光がよみがえる。船名「朝びらき丸」がそういう意味に解釈されているわけです。

 原作には原作の良さがありますが、映画は映画でファンタジーの型にのっとった新しいストーリーをつくりあげていたので、気持ちよく観終えることができました。
 





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Last updated  March 1, 2011 11:43:54 PM
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