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HANNAのファンタジー気分

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May 17, 2015
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カテゴリ:映画と原作
 映画「ホビット」三部作のおかげ?で、またもや関連本がいろいろ出ているようです。正直、多すぎて買い切れないし読み切れない。その中で、買って良かったのを2つ。

 『J.R.R.トールキン 世紀の作家』(トム・シッピー)は、大御所の総まとめというか、量も質もカバー範囲も、もうこれさえ読めばの感あり。こんなこともあんなことも、ああ、暇が出来たら私もつっこんでみたかったなあ、という話題ばかりで、うれしいです。
 たとえば…
 『ホビットの冒険』のゴクリとビルボのなぞなぞの出典とその特徴。原作を読んですぐ気づく読者も多いでしょうが、ビルボのなぞなぞはマザーグースのなぞなぞですね。「赤い丘の上に白馬が三十頭」などかなり有名なもの。『指輪物語』でホビットたちが歌う「月の男」の歌もマザーグース由来ですから、つまりホビット族とイギリス人との遠い共通性というか親近感を表しているんだなあ、と思えてまずは感動です。
 しかし、次に私は気になりました、ではゴクリのなぞはどこに出典があるのかしら? マザーグースとはちょっと趣が違うみたい。でもゴクリだってホビット族の遠縁の種族出ですから、イギリス人の遠い先祖のどこかにきっと出典がありそう、それはたぶんトールキンの専門から言って、北欧系…、とここまでは推理したのです。しかし、谷口幸夫『エッダ』『エッダとサガ』等々を読んでも、ゴクリのなぞなぞは見つけることができませんでした。
 それが、『世紀の作家』には出自と解説まで載っています。ゴクリのなぞの方が古い出典であること、また、マザーグースじたいの源についてトールキンはいろいろ思い入れがあったこと。なるほど!と充足感を味わうとともに、さらなる興味をかきたてられます。

 じつはこれがトールキン世界の逃れられない魅惑の一つでして、彼は作品に出てくる固有名詞一つ、なぞなぞ一つにも膨大な歴史的思い入れと知識とを注入しているので、その一端を知るとどんどん深入りしたくなり、いちいちに興奮を覚えて、収拾がつかなくなってしまうのです。
 ファンタジー作品を読むからには、世界に入りこんで先へ先へと進みたい、しかし立ち止まってじっくりルーツも探りたい。進んでしまうと探れない、探ってしまうと進めない。そのジレンマに次々襲われることを思うと、実際、何度目であっても作品をまた読み始めようと決意するのに勇気がいるほどです。

 『世紀の作家』の内容はその探りたい気持ちを刺激してくれる本です。しかしまた、刺激が多すぎてますます深みにはまっていく危険な罠ともいうべきかもしれません。

 対して、映画版を中心に、あれこれ新しいトリビアな話題・情報を得られて、へーえ!と楽しめるのが、『別冊映画秘宝 ロード・オブ・ザ・リング&ホビット中つ国サーガ読本』というムック本です。表面をおさらいするだけではなく、かなり偏ってマニアックなファン心理も紹介されているのが、この時期だけの旬の味わいというか、のちのち貴重になりそうな予感がします。
 





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Last updated  August 16, 2015 10:43:02 PM
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