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HANNAのファンタジー気分

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February 19, 2023
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 先のブログにあげた『うさぎは正義』の最新連載を見ていますと、主人公たちがたどりついた理想郷「うさぎの国」は、人工知能?による管理社会で、それをつくった人類は滅びた後でした。
 メルヘンな物語の終盤になって現れた黙示録的展開に、ちょっとびっくり。

 最近はやりの未来像なのでしょうか、AIに管理された平和な理想郷。
 昔のあからさまなディストピア(ジョージ・オーウェルの『1984年』に代表される)や、悪夢のような生態系(『風の谷のナウシカ』や椎名誠『アド・バード』など)、暴力世界(『北斗の拳』とか)とは違い、平穏で居心地の良い未来世界(問題はあるにせよ)です。

 癒やしの権化のようなモチモチの生物がたくさん出てくる『プリンタニア・ニッポン』迷子作 というコミックスも、そんな理想郷が建設されて間もない(再構築途上の)世界が舞台です。
 3Dプリンターの進化形である生体プリンターが生み出したモチモチの生き物プリンタニアが、とにかく愛らしくて、すべてのペット動物の良いところを凝縮したようなかわいさです。キーワードは「癒やし」って感じです。

 主人公の佐藤(「砂糖」に通じますね)が飼っているプリンタニアの名は「すあま」(と、「そらまめ」)。佐藤は感情の起伏の少ない、欲もなく覇気も足りない感じの、でもごく普通の人間(と思われた)。唯一の友人塩野(「砂糖」に対して「塩」ですね)は反対にちょっとチャラい陽気な発明家。
 彼ら一人一人には「コンサル」と呼ばれるAIがついていて、生活全般をサポートし、評価し、性格改善までやってくれます。けれどがんじがらめに管理しているわけではなく、その名の通り頼りになる相談役という感じ。

 近未来のAIとの共存て、こんなふうになるのかなあ、などと思いながら読み進むと、日常を描いた短編の中に、ちょろりちょろりと、この世界の設定が見え隠れしていきます。
 彼らは「旧人類」の文化を継承しようとする「回顧祭」を開いたり、汚染領域があったり、「残兵」(旧世界のロボットらしい)の逃亡事件があったり。肉体を手放した(つまり肉体的に死を迎えたってことですよね)あとは「彼岸」に渡って意識が「石」に移される・・・
 つまり、佐藤たちは、人類滅亡後、人類のつくったAI(「大きな猫」と呼ばれている)が再生した、新しい人類なのでした。そして、数も少なく、再構築された人工的な都市で、世界を再建しようという目的のために管理されながら育てられているのです。
 言うなれば、佐藤たちこそ、プリンタニア(=機械が創った生体)なのです! 教育され、レベルに振り分けられ、仕事やすみかをあてがわれ、今度は癒やしのペット「プリンタニア・ニッポン」をあてがわれ・・・
 今のところ、男性ばかりで、女性は一人もいませんし、家族という概念もないようです。恋愛感情や家族のしがらみなど、濃くてコントロールしにくい感情や状況が、すっかり排除された、希薄な社会。まねごとの祭や宗教。それが、なんとなく心地よい日常として読者に紹介される。
 でも、うそ寒いとか怖い感じはせず、ああ、そうなんだなー と自分のストレスも吸い取られていくよう。しいて言えば、さびしいあたたかさ、みたいな読後感です。

 環境破壊とか戦争とか、人間関係のストレスとか、もうそういうものには辟易としてしまった現在の私たちが真に求めるもの、それは、こんな終末と再生なのかもしれません。
 (そういえば、これに似た雰囲気をまとった物語に、​池澤夏樹の『やがてヒトに与えられた時が満ちて…』​があります。)

 『プリンタニア・ニッポン』はいま3巻まで出ていますが、だんだん明らかになっていくこの世界像(プリンタニアの生みの親の、お調子者のケンチキおじさんは、実はどうも黒幕みたいです)が、知りたくもあり、知らない方がよいかもとも思えたり。
 目が離せない作品です!





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Last updated  February 22, 2023 01:05:31 AM
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