カテゴリ:読 書 録
気になっている新刊の洋書がある。奴隷船についての本だ。
Marcus Rediker 著 The Slave Ship: A Human History(『奴隷船 ある人間史』)。 448ページの大著だ。 前から気になっていることで、この本を読めば書いてあるかな……と思うことがある。 アフリカ人を本国からカリブ海、アメリカ本土へと運ぶ奴隷船のなかで、黒人たちはどうやって生命を維持していたのか。 換気装置とてない船倉の床にびっしりと隙間なく横たえられ、手足を鎖につながれた人々。 ろくな清掃もされぬ船倉で数週間の航海だ。 糞尿まみれの船倉の悲惨は、実写映画では再現できまい。 奴隷の鎖を外してしまったら、最後の力をふりしぼって白人の船員らを襲うだろうから、そう簡単に鎖は外せない。 しかし、飢え死にさせたら元も子もない。 奴隷たちにどうやって食事をやったのだろう。 命を維持するギリギリの量の乾パンと水。 黒人の子どもに命じて、鎖につないだ黒人ひとりひとりの口元に食べ物と水を持って行かせたのではないかというのが、ぼくの勝手な推測である。 そして、そうやって船倉で子どもが食事を配ってまわったり、ないしは息絶えた黒人を外に出したりするときに歩けるように、床の糞尿も最低限の清掃作業は子どもに命じてやらせたのではないか…… ……と、これも勝手な推測である。 この本のことを知ったのは、『クリスチャン・サイエンス・モニター』紙10月9日号の書評で。 http://www.csmonitor.com/2007/1009/p16s01-bogn.html ピッツバーグ大学で海洋航海史の教鞭をとる著者の警告によれば「読むのに苦痛を伴うが、読めばすぐには忘れられない本」の由。 当時の当事者たちの手記をてんこ盛りにしてあるらしい。 あァ、夢にでてきたら怖い。 落命したのは船倉の奴隷ばかりではないらしい。 利益の極大化を図る船長とその取り巻きが、水夫に対して厳しい統制を敷いた。 ろくに食い物を与えられなかったなどというのはいいほうで、 英国への帰途に就こうとするときにカリブの小島に置いてきぼりにされた水夫もいたらしい。 そうすれば、奴隷船経営者は給金を払わずに済むから。 それが分かっていれば、水夫らが団結して船長の寝首を掻きそうなものだが……。 奴隷も水夫もほぼ5人のうち1人が亡くなったのだという。 (さすがに奴隷のほうが死亡率は高かった) 興味を引かれる地獄本だ。 アイリス・チャンの『南京の凌辱』のようなトンデモ本にとってかわって空港のペーパーバックス売り場に並んでくれないか。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
Oct 11, 2007 08:12:31 AM
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