テーマ:政治について(20118)
カテゴリ:世界を見る切り口
ロシアのソーチ (Сочи) で平成26年(2014年)に行われる冬季オリンピックは、プーチン一派のおいしい利権らしい。
ソーチにはもともとオリンピック開催に適した基盤整備がなく、当初から120億ドル(=1兆2500億円)のインフラ投資が必要と言われていた。 破格の金額。これまでの冬季大会3回分の金額だ。 ところが最近では組織側いわく、200億ドル(=2兆1千億円)かかるねェ。 大会は6年先というのに、早くも水増し数字が宙を舞う。 かくて、人民から政府がまきあげたカネは、土建セクターへ流れ込む。 北京五輪のための都市再開発の美名(?)のもとに、ろくな補償もなしに中国人民が住宅を破壊され転出を余儀なくされるようすは広く報道された。 ロシアでも同じことが起きるらしい。 五輪用地のためなら国家が好きなだけ土地を没収でき、人民側には抗弁の権利なしという、新たな法律ができたのだ。 いちおう「没収にあたっては市場価格にもとづく補償を行う」という条項があるらしいが、どうせ空文化する。 4月26日の『ウォールストリート・ジャーナル』紙に Garry Kasparov 氏が書いた評論で知った。 題して Russia's Pre-Olympic Nightmare (ロシアのオリンピック前的悪夢)。 カスパーロフ (Гарри Кимович Каспаров) 氏は、母親がアルメニア人で父親はユダヤ人。アゼルバイジャン生れ。 野党連合「もうひとつのロシア (Другая Россия)」の代表だ。 憲法規定で2期連続の任期期限がきてしまったプーチン大統領は、傀儡のドミトリイ・メドヴェージェフ (Дмитрий Анатольевич Медведев) 氏を後任の大統領に仕立てた。 自らはプーチン「首相」に納まるという茶番で、法遵守のいい子ちゃんぶりを世界に見せつけた。 独裁者プーチンなら、憲法規定を変えて3期目の大統領に居座ることだって難しくなかったろうに、なぜそうしなかったのか。 カスパーロフ氏の分析が面白い。 いわく、 プーチン氏は西側の覚えめでたい人物でいる必要があるのだ。 なぜって、 英国の金融市場やスイスの銀行、欧州各地に投下したカネを西側諸国が凍結しにかかるなんてことになったら困るからね。 世の中は中国とロシアに甘すぎるぜ。 独裁者のフィデル・カストロが弟に政権を 「平和裡に」 ひきわたしても誰も褒めないというのに、プーチンの茶番にはドイツのメルケル首相が 「権力移行の円滑ぶり」 を賞賛する始末だよ。 かくて、カスパーロフ氏はこう結ぶ。 ≪中国のショータイムへの追従(ついしょう)など願い下げなのは当然だ。 かといって本来なら政治家が前面に立って闘うべき争いに世界の一流選手たちを巻き添えにするのはフェアではなかろう。 ロシア人の人権闘争に世界が支援の目を向けてくれるのは、2014年五輪までおあずけなのだろうか。≫ ぼくが大学でロシア・朝鮮の地域研究をしていたころは、 「ソヴィエト連邦」 体制の末期で、どこを切っても金太郎飴のように 「末期」 の文字が浮き出たものだ。 しかし資源バブルで余裕綽々(しゃくしゃく)の現ロシアのこの利権壟断(ろうだん)ぶりは、出口が見えない感じだ。 しょせん発展途上国の現象よと鼻で嗤うには、例によって図体がでかすぎる。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
May 4, 2008 11:06:13 PM
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