テーマ:政治について(20115)
カテゴリ:世界を見る切り口
平成18年11月5日に 『世界日報』 に 書評 をいただいたのに、遠慮のかたまりになってしまい、配信誌にもブログにも転載させていただいていない(ようである)。
2年以上経ち、ウェブ上から記事が消えてしまうかもしれないので、転載させていただきます。 ≪日本の本領(そこぢから) 泉 幸男 著 名医に似た確かな眼力 本書のテーマは、天皇論から憲法、少子化問題までと幅広いものがある。 前著 「中国人に会う前に読もう」 で明らかなように、揚げ足取りや批判のための批判といった矮小(わいしょう)な世界とは一線を画し、的を射た国家観や世界観に裏打ちされた視点の高さが著者の持ち味だ。 本書でその眼力の確かさを確認したのは、東南アジアを俎上(そじょう)に載せた第5章だ。 著者はこう指摘する。 「そもそも自分の流儀を変えることにエネルギーを使おうという気を起こさない恐るべき怠惰そのものが、南洋の民の安定の錨となっている」 著者が言いたいのは、南洋の民の民族性ではない。 今、日経をはじめマスコミが騒ぎだしている「東アジア共同体」なるものが、実は虚構のレールを走る亡霊でしかなく、所詮(しょせん)、絵空事でしかないというのだ。 また、「東アジア共同体」 というなら、東アジアの経済実体である台湾を無視していることに異議を唱える著者の主張もまっとうだ。 大手マスコミも中国に気兼ねして、これには触れない。 「東アジア共同体」 構築に向けた東アジア・サミットにしても、東南アジア諸国からすれば、近隣の大国や先進国がテーブルに並べる貧困解消プランをつまみ食いする 「ビュッフェ」 の場だという指摘も穿(うが)った見識だ。 こうした本質論を展開できるのは、文献ばかりを漁(あさ)っている机上の学者には到底無理だ。 外地で汗をかきながら、その闇の世界に分け入り目を凝らし続けた人間でしか出せない結論だ。 知識だけで名医にはなれない。さまざまな症状を診ながら、病因をずばり読み取るセンスが必要だからだ。 その意味では、さまざまな現象の表層に翻弄(ほんろう)されることなく、ずばりその本質にメスを入れる著者の眼力は、名医のそれと似ている。(池永達夫)≫ (『世界日報』 紙掲載:平成18年11月5日) 『日本の本領(そこぢから)』 は、麻生太郎さんが使いたかったかもしれない 『日本の底力』 なるタイトルを、奇(く)しくも先取りした本なのである。 平成17年11月21日のブログ に証拠がある。 この頃まだ、麻生太郎さんの 「日本の底力」 論は出回っていなかった。 『日本の本領』に書いたテーマの数々も、ほとんど全て解決を見ないまま。 つまり、今でも全然古びていない本なのであります。 それを喜んでいいのかどうか。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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