カテゴリ:読 書 録
≪才能というのは、妙なもので、世の中が認めて初めて才能となるわけで、ピアニスト、音楽家というのもそうですし、あるいは歌手、タレントになるというのも才能かもしれない。
あるいは文章を書いて、ベストセラーを書くのも才能かもしれないし、学者になって政府のいろいろな諮問機関に入るのも才能かもしれない。 いろいろなスポーツにおいても才能がある。 才能というのはいろいろな形であるのです。 でも、そういう才能は、レピュテーションの世界なの。名声の世界、社会で持て囃されるということなの。 言ってみれば社会が認める虚栄の世界なの。 だから才能があって有名になるということは、すべての人間に求められるはずがありません。 だって1億人全部歌手になったら、誰が聴くんですが。 1億人全部が作家になって、村上春樹みたいになったら、誰が買うんですか。 それはごく選ばれた才能のある人間が、自分の才能でもって社会的に有名になるということでしょう。 そんなのは虚栄の世界なんです。≫ (239ページ) 渡辺京二×津田塾大学・三砂ちづるゼミ 『女子学生、渡辺京二に会いに行く』 (亜紀書房、平成23年刊) 引退したフツウの大学教授かと思っていたら渡辺京二さんって、自分の「好き」を突き通したひと。不器用に突き通して、客観的にみると苦労しておられるけど、さわやかに生きてきたひと。 宝石のようなひとだ。 この本、渡辺京二先生の語り口がつくづくいいですが、とくにさいごの50ページあまり、「無名に埋没せよ」 という語りは千鈞。 冒頭に引いたのはそこから。 人間が志を果たすというのはどういうことなんだろうと、最近考えるわけですね。 ひとりの人生の圧倒的部分は齷齪(あくせく)の積み重ねであって、それがふつうのこと。 でも幸か不幸かそれを悟れずに図体が大きくなった人間が権力を志向するんだろうね。 あ、京二先生の語りのこのくだりも好きだな。 ≪だから一人の男にとって女とめぐり会って、その女を味わう、味わうなんて言ってごめんね、だけど、これ、味わうわけだね (笑)。自分がつきあっている女を十分味わっているかどうかが問題ですよ。≫ (247ページ) * この本の読後感想は、こちらにも書きました: 蒸発したい」 (平成24年2月8日) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
Feb 12, 2012 11:50:53 AM
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