カテゴリ:読 書 録
ぼくが大学生のころ (昭和50年代後半)、
「経済学は何で役に立たないのか」 「さんざん捏ねくり回した挙句、人間社会の分析がからきし出来ない経済学」 といったことが盛んに言われていた。 マルクス経済学の終焉の時期にあたったこともある。 しかしそれ以上に深刻だったのは、近代経済学が壁にぶち当たっていたことだ。 近代経済学は、homo economicus の存在を前提とした。 人間というのが完全に合理的で、世界のすべてのことに通じていて、自分の利益追求を最優先する存在だという、実に嘘っぽい仮定をもとに組み上げられた結果、嘘っぽい答えしか得られなくなっていた。 筒井義郎・山根承子(しょうこ)著 『図解雑学 行動経済学』 (ナツメ社、平成24年刊) 人間って何なの? 心理学と経済学を結合させたのが行動経済学らしい。ぼくが大学生のころ、この分野の授業はなかった。 行動経済学の創始者といわれる Daniel Kahneman が一世を劃した Science 誌上の論文発表が昭和49年。 人間行動が、論理的な推論にもとづくより、あてずっぽう(=heuristic)によるところが大きいという、そりゃそうだろと思えるような内容だそうで、これが当時の経済学界では劃期的だった。 ぼくが中学3年生のころだね。 そのあとカーネマン氏がプロスペクト理論を発表するのが昭和54年、ぼくが大学2年生のころ。 そういう新しい思潮だったから、大学の授業に反映されなかったわけですね。 物珍しさで手にとってみた入門書だけど、わかりやすかった。これはもっと深く学んだほうがいいなと思った。 * 幸福のパラドックスの話が、腑に落ちた。 ≪主観的幸福感を高めることが人生の目標であると考えると、…(中略)… 生活において、他人と比較しないものや、簡単には順応しないような (=他人が同じ土俵に上がってこれないような) 事柄に重点を置くことが重要です。 たとえば、豪華な家や車といった物質的な豊かさは目に触れやすく、自分の家と他人の家を比較して相対的に評価する傾向があるでしょう。 一方、読書や家庭生活の調和などは他人にはわかりにくいので、これらについてはその絶対水準が幸福感を増大させる傾向が強いでしょう。≫ (194ページ) ぼくが会社の人事の滑った転んだに無関心であろうとし、自分の得意分野・関心対象にのめり込むのをよしとし、より多くのひとに発信できることを夢見てきたのも、これに符合する。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
Apr 30, 2012 02:35:46 PM
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