テーマ:政治について(20112)
カテゴリ:読 書 録
暗愚の罪ふかい菅直人前首相の混迷きわめた原子力対応について、2ヶ所で批判している。
≪ここで見落してならない点は、ストレステストが、定期検査あけ原発の運転再開とは直接関係しない事柄だということである。 その点は、…<中略>… ヨーロッパ諸国が、原子力発電所を稼働させながらコンピュータを使ってストレステストを実施していることからも明らかである。 そもそもストレステストを経なければ原発を運転することができないのだとすれば、なぜ、2011年7月6日の時点で稼働中であった19基の原発の運転を止めて、ストレステストを行わなかったのか。 …<中略>… 事実がそうでなかったことは、菅首相の唐突なストレステスト提案が、別の政治的意図にもとづくものであったことを強く示唆している。≫ (32ページ) ≪菅直人前首相の失政により、定期検査あけ原発のドミノ倒し的運転停止が継続し、電力供給不安による産業空洞化が深刻となっている現局面では、供給不安を増幅する発送配電分離を行うべきではない。≫ (118ページ) 『電力改革 ― エネルギー政策の歴史的大転換』 橘川武郎(きっかわ・たけお)著 (講談社現代新書、平成24年刊) 著者の橘川教授の専門は電力業経営史。電力業界の業態の変遷について、通史的な記述が3度にわたり繰り返されていて重複が多い。 そういうご専門の部分には文句のつけようがないが、専門から外れた提言部分では現実からの遊離が気になる。 ≪これからは、二国間クレジット方式にもとづき、石炭火力の燃焼技術の移転によって海外で二酸化炭素排出量を減らす時代がやってくる≫ (237ページ) という空論を本書の締めにしてある。 橘川教授は、日本の超々臨界圧プラントが開発途上国で引っ張りだこだとでも勘違いしているのだろう。 ほんの数パーセントの熱効率アップのために、中国製のプラントの倍の値段を払って日本製の発電設備を買ってくれる開発途上国が、さほどあるわけではない。 かといって、日本製の高価なプラントを政府の補助金でダンピング輸出する、などということは当然 WTO が認めない。 排出権取引で得られる益金など、超々臨界圧プラントのコスト高をカバーするのには程遠い。橘川教授は、そういう基本的なことがわかっていない。 * 発送配電分離について、橘川教授は慎重派である。この点は評価したい。 ≪東日本大震災後の東京電力・東北電力の火力発電所や送配電設備における設備復旧過程をみても、電力会社の現場で働く人々の勤労意欲は相当に高い。 その高いモラルを支えるのは、「絶対に停電を起こさない」 という使命感である。 発送配電分離は、この使命感を萎縮させ、日本電力業の現場力を後退させるおそれがある。≫ (121ページ) まったく同感だ。電力業も、熱い血の人々が支えているのである。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
Jun 9, 2012 06:14:54 PM
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