テーマ:政治について(20112)
カテゴリ:読 書 録
岩波書店が語らせる税金論ということで、読むに堪えない本かもしれないと警戒して読みだしたが、唐突に出てくる反原発の主張を除いては、まともな本だった。
世の中にかくも多くの税目があることを今さらながら知る。 税金体系をどう設定するかは、つまるところ世の中をどう切り分けるかに関わる。 人間とはどういう動物かを問う世界だ。 『日本の税金 新版』 三木義一(よしかず)著 (岩波新書、平成24年刊) 日本のポピュリズムが求めてやまない減税論がロジカルでない、という主張に共感する。 ≪政治家も減税を主張するのが正義であるかのように振る舞った。本来、「減税」を要求するのは富裕層で、国に自分の財産は出さない、その代わり、国は何もしなくていい、という発想のはずである。 これに対して、一般市民は増税による公的資金の確保で社会保障の充実を願うはずなのに、減税が正義の味方の主張としてまかり通ってきた。≫ (5~6ページ) 「まかり通ってきた」 の一言に、専門家の怒りがほとばしっている。 ≪なぜ、日本では 「減税」 だけが正義の主張なのだろう。 税をきちんと提供してもらい、子供たちのために優先的に使い、子供たちのスタートラインの格差を縮めようという主張が、なぜもっと堂々となされないのだろう? どうして、増税 = 悪 のようなキャンペーンがまかり通ってしまうのだろう。≫ 著者の三木さんは、国民の政府への信頼が低いからだという。 はたしてそうだろうか。 代議士と記者が勉強不足で、「明日の百より今日の十が良い」 猿みたいな人々にはウケる、誤った知識をふりまきつづけるからではないか。 * 消費税の章では、てっきり消費税反対論をぶちあげているのかと思ったらそうではなくて、消費税の 「非課税」 と 「ゼロ税率」 がどう違うのかなど、勉強になることが多かった。 (「非課税」 だと、仕入れのときに負担した消費税を控除できないので、けっきょく販売時の本体価格に仕入れ時負担の消費税分を入れ込むことになる。 いっぽう 「ゼロ税率」 だと、仕入れのときに負担した消費税の還付が受けられることになり、税収は大きく減る。) * 相続税や固定資産税の設計にどういう問題があるか、情熱をこめて語っている。単に税率だけの問題ではないことを知った。 ビールにかかる税率が高い理由は、クイズに使えそうだ。 ≪1950年代の大蔵省関係者の解説によれば、ビールはその大半が家庭以外の料理店等で消費されており、そうした料理店等に出入りできる層は社会的に裕福な層であることが高税率の根拠とされてきた。≫ 冷蔵庫のない時代、ビールをおいしく飲むのは金持ちの楽しみだったというわけか。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
Jun 17, 2012 07:36:55 PM
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