テーマ:政治について(20115)
カテゴリ:読 書 録
三島由紀夫が新聞・雑誌に書いた小文を集めた 『日本人養成講座』 を読んでいたら、慰安婦に言及した箇所が出てきた。
『日本人養成講座』 三島由紀夫著、解題・高丘卓(たかし)、解説・三潴(みづま)末雄 (平凡社、平成24年刊) 旧士官学校を出て、いま (=昭和43年当時) は50歳になっている、旧軍人にして実業家の御仁が指揮した輸送船団が、米軍機に撃沈されたときの話だ。 ≪水へ飛び込んでしばらくは水を飲み、幾らあがいても海面へ出られる見込がなかった。あがきにあがいて、ふと気がついたときは、さんさんと日がさしてゐる海面へ、顔が出てゐた。 36時間後に救助されるまで、彼は波に漂って、生死の間をさまよってゐたのである。 やっと救助艇がきたときに、その海軍の救助艇は、浮きにつかまって助けを求めてゐる慰安婦たちと看護婦たちを、一番先に救った。 海軍は、さすがにレディ・ファーストである。≫ (93ページ) 三島由紀夫が昭和43年6月~44年5月に 『Pocket パンチ Oh!』 に連載した 「若きサムライのための精神講話」 の一節である。 このくだり、朝日新聞の記者なら、軍艦の一角で慰安婦たちが女郎屋を開業させられていた例証であると、嬉々として引用しそうだ。 ちゃんと読めば、「輸送船団」 と書いてある。慰安婦も一般乗客として、軍に護送される民間輸送船に乗っていたわけだ。 * ところで、三島由紀夫が 『婦人公論』 昭和34年1月号・付録のために書いた「文章読本」 に、文学作品の会話文につかう方言に言及がある。 ≪谷崎氏は「卍」を書くに当っては、大阪生れの助手を使ったと言はれますが、私の如きなまけ者は、「潮騒」という小説を書くときは、いったん全部標準語で会話を書き、それをモデルの島出身の人に、全部なほしてもらったのであります。≫ (72ページ) 正しい作法だと、ぼくは思う。 三島由紀夫は、木下順二らの民話劇作家が “発明” した人工的方言を批判している。 ≪どこの国とも知れぬ、どことも限定されない世界を舞台に出現させるために、かういふ奇異な方言を使ふことは、一種の邪道であります。 …<中略>… 一部の新人劇作家が、得体の知れない方言を使って戯曲を書くことを、私は一つの技術的逃避だと考へてゐます。≫ (72ページ) 筋を通したひとだ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
Oct 15, 2012 03:46:41 AM
コメント(0) | コメントを書く
[読 書 録] カテゴリの最新記事
|
|