テーマ:読書(8432)
カテゴリ:読 書 録
宇宙人も怪奇現象もワープもない。タネも仕掛けもないリアルな設定で、火星にひとり取り残された米国人が549日を生き延びる話。
勤労社会人向けに言うなら、なまじっかなビジネス書よりもずっと、不屈で合理的なマインドセットを養ってくれる。社内研修の課題書にしても面白いのじゃないか。
想定外の時速175キロの砂嵐に飛ばされたマーク・ワトニー。彼を火星に置き去りにして、残りのクルー5名は緊急発進せざるをえなかった。 砂嵐に耐えたテント式の基地には6人があと50日間食べていける食料が残されていた。1人が食べれば300日分ということになるが、次の火星探検隊が来るのは4年後だ。地球と通信する手段も砂嵐で破壊されて修理は不可能だ。 この絶望的な状況に置かれたら、ぼくなら即座に達観して、死後のいつの日かやってくる探検隊へ大ベストセラー確実の手記と散文詩集を残し、印税で家族がしあわせに暮らすことを祈るだろう。 ところがマーク・ワトニーはすごかった。チャラチャラ気分も失わず、いのちを左右する難題をクリアする。映画でいえばラスト5分間の涙の「やったぜ!」大興奮。このままこの本がハッピーエンドで終わっても不思議ではない。まだ300頁もあるのに……。 次から次へと難題が降って湧く。それを解決するたびに、またまた「やったぜ!」大興奮だ。心が折れそうになる状況に屈しない合理的楽天マインドに、読みながら自分も染められていく。 20世紀フォックス社が映画化するらしい。楽しみだ。 異星に残されたたったひとりを救うために巨費を投じるストーリーがリアルなのは、舞台が米国だから。 中国なら科学革命英雄の記念碑を天安門広場にちょいと立てて終わりだろうし、日本なら絶望的状況にまつわる政治家失言で国会が機能停止して終わるだろう。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
Oct 25, 2014 05:20:51 PM
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