テーマ:読書(8439)
カテゴリ:読 書 録
文藝誌“The Paris Review”掲載の作家インタビューから11篇を選んだもの。
パリ・レヴュー・インタヴューII 作家はどうやって小説を書くのか、たっぷり聞いてみよう! (岩波書店、平成27年刊) 青山 南(あおやま・みなみ)編訳 『百年の孤独』の著者 Gabriel García Márquez が語ったこのくだりは、藝術に広く当てはまることを短く言い当てている: ≪たとえば、象たちが空を飛んでいる、と言っても、ひとは信じない。ところが、425頭の象が空を飛んでいる、と言ったら、ひとはたぶん信じる。≫ (170頁) ぼくは、自分をうまくだましてくれと切望しながら小説を読み、演劇を観、絵を眺める。欲しいのは、ウソを真実と言いくるめるリアリティの演出だ。受け手をうまくだますために必要なのは、出来事の細かい叙述であり、丁寧な職人藝。 藝術に広く当てはまることだと思う。 マルケスは、写真集を集めるのが好きなのだって。イメージの具体化に役立つこともあると。 John Irving さんは、別のアプローチだね。 ≪ぼくが書きたいと思ってる小説は、この社会のみんなが当たり前だと考えることを、そうじゃないんだぞ、と みんなをどんどん不愉快にさせるようなものだ。作家たちは悲惨なことを書くべきなんだ。そして悲惨なことを書くにはもちろんコミカルに書かなくちゃいけない。 ジョージ・バーナード・ショーは 〔中略〕 大事なことは、真実をひとつ見つけたら、それをおおげさに書け、しかも軽快に、そうすれば いずれ それは だれの目にも明らかになる、と言ってる。だれの目にも明らかなんていうのは あんまりポストモダン的じゃないけど。≫ (275頁) Susan Sontag さんが信頼に足るひとなのか、よく知らないのだけど、彼女の居室はひとつの理想のように思える: ≪スーザン・ソンタグが住んでいる家具の少ない5部屋のアパートメントは、マンハッタンのウェストサイドのチェルシーにある建物の最上階である。本 ― 1万5千冊ほど ― や紙がそこいらじゅうにある。美術や建築についての、その他もろもろについての本たちは、ざっとながめるだけでも一生かかりそうだ。さまざまなヨーロッパの文学が ― フランスやドイツやイタリアやスペインやロシア等々のが、何百冊もの日本の文学についての本や日本についての本といっしょに ― 言語別におおまかに時代ごとに整理されている。≫ ≪ソンタグは大の切り抜き魔なので、本という本が切り抜きでいっぱいで (「どの本も印だらけでばらばらになっている」と彼女は言う)、 本棚は、読まなければならないものの名前を走り書きしたメモがどっさり、花綱のように咲き乱れている。≫ (297頁) 彼女がなぜ文学に傾倒したか。 ≪子供の頃はずっと、医者になりたかった。ところが文学に呑みこまれた。あらゆる人生を味わってみたかったのね。作家として生きるのであれば、いちばんたくさんいろんなものが味わえるだろうと思ったわけ。≫ (302頁) あぁ。欲張りなひとなんだな。 『悪魔の詩』でホメイニから死刑宣告を受けた Salman Rushdie さんは、いまニューヨークにいる。 「イスラム過激主義が擡頭してくるのは、それを外向きの顔として利用できるんじゃないかと人々が考えた結果のことなんだから」―― みたいな真実をさらりと言ってのける。 ≪クロサワは、ぜったい入れない文化に、サムライの世界に、連れてってくれる。わたしはサムライ的な考え方はしないが、体をぽりぽり掻く(「椿三十郎」の)トシロー・ミフネはだれだって好きにならずにはいられない ―― ただちにかれに味方したくなる。 そういうようなことを藝術作品にはやってほしいんだよ、行ったことのない世界に連れてってくれるとか、こっちの世界を膨らましてくれるとか。映画制作のあの偉大な時代は小説家たちに教えてくれるものがどっさりあった。映画で教育をうけた、とわたしはいつも思ってたよ。≫ (371~372頁) ラシュディー著の『真夜中の子供たち Midnight’s Children 』が平成5年に、マン・ブッカー賞の25年の受賞作群のなかから最優秀作として表彰されたのだって。『悪魔の詩』も「大半はロンドンについての小説さ。サッチャリズム下のロンドンでの移民たちの生活についての」だって。 これは読んでみないとね。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
May 5, 2016 06:19:02 PM
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