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テーマ:小説書きさん!!(609)
カテゴリ:オリジナル小説(仮置場)
※以下はオリジナルNL小説(シリーズもの)のの中の「光と闇の境界線」という話の
続き(-5頁目-)です。 「光と闇の境界線」-5頁目(1)- 身体の上に何かが乗っかっている。 重くはないけれど……ほんの少しだけ負荷が掛かっている感じ。 その違和感に引っ張られるようにして、パティスはゆっくりとまぶたを開いた。 「ここは……」 薄暗がりに閉ざされていて、目が慣れてくるまで全ての輪郭がぼやけて見えたけれど……どうやら自室のベッドに寝かされているらしい。 そこまで考えてから「あれ?」と思う。 (私、確か……) 記憶が正しければ、自分はさっきまで月光を浴びながら、ナスターとともに原っぱに立っていたはずなのだ。 それが、どうしてベッドになんて居るんだろう? ふとそこまで考えて、頭に感じる湿った感触に額へ手をやれば、濡れたタオルが載せられていた――。 そこで初めて、キョロキョロと視線を彷徨わせてからハッとする。 「ブレイズ……?」 喉が渇いていて声がか細く掠れてしまったけれど、その声は確かにベッドサイドでパティスの手を握ったまま眠りこけてしまっているブレイズの耳朶を震わせたようだ。 閉ざされていても思わずうっとり見入ってしまいそうになる、眉目秀麗な顔の、長い睫毛がゆっくりと揺れて……そうしてそれとは不釣合いなほど激しい勢いで、ブレイズの目が開かれたのだから。 いつ見ても吸い込まれてしまいそうな輝きを放つ深紅の瞳は、しかしそれを凝視する間をパティスに与えてはくれなかった。 目が開かれると同時に跳ね起きるようにして、ブレイズがパティスの顔を覗き込んだからだ。オマケにいきなり頬をムニッと摘ままれて、パティスは思わず悲鳴を上げた。 「きゃー! ちょ、何っ? 痛いっ!」 その、抗議の声を聴いて、ブレイズが安堵したように肩の力を抜く。 「パティス! お前、どんだけ心配掛けりゃー気が済むんだよ!」 しかし、安心感とともに怒りが込み上げてきたのか、ブレイズは握っていたパティスの手を振り解くように投げ捨てると、そう言ってそっぽを向いてしまった。 驚いたのはパティスだ。 「あ、あの……。ねぇ、ブレイズ?」 その怒りの原因が自分にあるらしいことは分かったけれど、現状がさっぱり把握出来なくて、どうしたらいいのか分からない。 でも、背を向けたブレイズがそのまま行ってしまうんじゃないかと思ったら、怖くなって思わず彼を追うように身体を起こしてしまっていた。 途端、額に載せられていた濡れタオルがベッドから滑り落ちる。あっと思って手を伸ばしたら、思わぬ目眩に重心がぶれた。 「きゃっ」 「危ないっ!」 ベッドから落ちる!と思った瞬間、振り返ったブレイズに抱き留められて、 「あんま、心配かけんなよ……!」 その言葉とともに抱き締められた。 それも、今までに経験したことがないくらい強い力で――。 その感触に、パティスは頭の芯までピリピリと痺れるような錯覚に陥る。 それが、嬉しさからばかりくるものではないと知ったのは、腕の力を緩めたブレイズの手が、自分の額に伸ばされてから。 「まだ、熱が高いな」 心配そうにそう呟くと、ブレイズはパティスの身体をベッドの上にそっと押し倒した。 【続く】 ---------------------------------------------------------- ↑topはこちら。 ※「一億年後の空の下」様との合同創作サイトです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2008.11.26 10:02:20
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