◇児童養護施設 匿名の送り主に感謝 果物を毎月、15年目に--横須賀/神奈川
入所の7割が虐待経験、「深い思いやり感じる」
親に虐待を受けるなどした子どもたちが生活する横須賀市の児童養護施設「春光学園」(同市小矢部2、入所者数81人)に、差出人不明の果物が毎月欠かさず届いている。果物は施設で暮らす子どもたちへのプレゼントで、始まってから15年目を迎えた。板橋正園長は「これほど長く続く差し入れは経験がない。子どもに対する深い思いやりを感じる」と感謝している。【内橋寿明、写真も】
今月のプレゼントはナシだった。直径10センチほどの茨城県産「豊水」。みずみずしい40玉が20日、段ボール2箱に入れられて届いた。手にした板橋園長と主任指導員の児山秀一さんは「大きくておいしそう。本当にありがたいことです」と笑顔を見せた。
板橋園長によると、プレゼントは93年から突然始まった。旬の果物が毎月中旬~下旬に、同市内の同じ青果店から配達されている。当初は青果店に問い合わせたが、贈り主の強い希望で名前などは秘密のままだ。
これまで春~夏はブドウやモモ、ナシ、スイカ、秋~冬はリンゴやミカンなどが届いた。価格にすると1回につき1万~2万円にもなるという。届いた果物は通常の献立の追加メニューとして施設で暮らす子どもたちに提供している。
春光学園は1945年、戦争孤児の施設として開園した。現在は児童福祉法に基づき、養護を必要とする児童らを入所させ、自立を支援している。同市や横浜市、川崎市などで保護された幼児から高校生(2~18歳)の男女計81人が入所し、市内の学校に通うなどの生活を送っている。
入所理由は、親の死亡や行方不明、離婚や虐待などの複合要因だが、板橋園長は「全国的に虐待を受けた子どもの入所が急増しており、当園では7割の子どもが虐待の経験がある」と深刻な現状を説明する。
それだけに、毎月届くプレゼントは元気の源。板橋園長は「この厚意にこたえて、子どもたちの健やかな成長を一層支援したい」と話しており、児山さんも「子どもたちは『今月は何』と聞くほど楽しみにしており、喜んで食べています」と感謝している。
9月27日朝刊 12時4分配信 毎日新聞