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カテゴリ:小説・海外
これが三作目なのですが、既にアメリカミステリー界の実力派として人気の、ジョン・ハートの『ラスト・チャイルド』を読みましたので、感想です。
早川書房創立65周年 & ハヤカワ文庫40周年記念作品。 だからでしょうか、ポケットミステリーと文庫が一緒に発売。
となれば、私はやっぱりポケミスを買います。(一番上の) ところで出かけ先で初めての書店で、ポケミスのコーナーがみつからず店員さんに聞いたんですが、“ハヤカワ・ポケット・ミステリー・シリーズ”を知らない!!。 ちょっと寂しかった・・・。 あらすじはamazonからのコピペ。 十三歳の少年ジョニーは、犯罪歴のある近隣の住人たちを日々監視していた。 彼は、一年前に誘拐された双子の妹アリッサの行方を探しているのだ。 美しい少女だった妹は何者かに連れ去られたが、警察はいまだ何の手がかりすら発見できずにいた。 ジョニーの父親も、娘が誘拐されてまもなく謎の失踪を遂げ、母親は薬物におぼれるようになった。 少年の家族は完全に崩壊したのだ。 ジョニーは学校を頻繁にさぼり、昼夜を問わない危険な調査にのめり込んでいく。 ただひたすら、妹の無事と家族の再生を願って……。 アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀長篇賞&英国推理作家協会賞最優秀スリラー賞受賞。 本の帯にはアメリカ探偵作家クラブ賞最優秀長篇賞はノミネート中になっているんですが、受賞したのでしょうか。 『川は静かに流れ』に続いての受賞ですか、凄いなぁ。 ジョニーの妹は一年前に誘拐され、未だ見つかっていない。 一年の間に、ジョニーの家庭は崩壊してしまっている。 父は、母の責める言葉に耐えられず(父が妹を迎えに行くはずだったが、仕事が忙しく遅れた)に失踪。 母は、父のかつての仕事の仲間である男と不倫中で、ほとんど依存している状態。 この男がまた最低で、母のキャサリンやジョニーに暴力をふるう。 母はお酒と薬の依存症で、息子のジョニーの世話は放っておきっぱなしです。 ジョニーは妹を探している。 家を抜け出し、バスに乗り、そして地図を見る。 妹は生きていると信じて。 生きていれば、父は帰ってきて、母は前のような魅力的な母に戻り、そして家庭は元に戻るはずだと信じて。 自分を信じ込ませて、必死に妹を探すジョニーが痛々しい。 ジョニーの唯一の友達のジャック。 彼の家庭も複雑です。 ジャックの兄は野球選手として輝かしい未来があり、障害のあるジャックを、父親は差別する。 ジャックはジョニーに疑問を投げかけながらも、寄り添うように、行動を共にする。 この2人の少年が過ごす時間の描写がまた良いんですよね。 こう言うシーンが私は好きです。 妹の事件を解決できなかった刑事のハントは何かとジャックの世話を焼くが、ジャックは心を開かない。 そんな時、妹と似た年頃の少女が誘拐される。 殺された大学教授。 彼の「あの子を見た」と言う言葉を聞いた脱走した服役囚。 ジョニーが目をつけ、見張っている子供への性犯罪常習者。 事件は、解決するように見えながら、更に複雑な様相を呈します。 描いているのは家族です。 妹の誘拐事件によって崩壊してしまったジャックの家庭だけではありません。 この場合は少年ですが、子供にとって親の存在を考えさせられる描写も多い。 そして今作は少年の友情もまた描いていると思う。 事件の結末はやりきれない思いにさせられますが、少年達の友情によって、明るさが見えるラストが良かったと思いました。 私は事件を描きながら、登場人物の心の描写に優れた、こう言うミステリーが好きなんですよね。 (ハードボイルドも大好きですが) 個人的にはジョニーの妹探しとその心情の描写がちょっと多いかな。 プロローグで凝縮させて描いているのが印象的なので、本編内にこれほど多くなくとも良いんじゃないかと思いました。 家族を描くと言うのは、アメリカミステリーの1つの伝統だなぁと思ったりしました。
デビュー作。 アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀新人賞ノミネート作。
アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀長篇賞。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2010年06月08日 22時51分05秒
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