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カテゴリ:小説・海外
作者はアルゼンチンの巨匠だそうです。
恥ずかしながら私は本作が始めて。 あらすじはamazonからのコピペ。 合衆国南部のキリスト教原理主義組織と、中南米一円にはびこる麻薬ビジネスの陰謀。 アメリカ政府と手を結んだ、南米軍事政権の恐怖。 アルゼンチン現代文学の巨人マルコス・アギニスの圧倒的大長篇。 善の名を借りた悪、正義の名の下の不正や暴力は、時代を超えて存在する。 以前『マラーノの武勲』で南米における異端審問の問題に取り組んだアギニスは、本書では現代が生んだカルト教団と麻薬組織をテーマにしている。 そこに窺える鋭い問題意識は、村上春樹の『1Q84』とも繋がるだろう。 南北アメリカ大陸を舞台に、人々が忘れたがっているおぞましい歴史的事件を絡ませた物語のスケールは壮大であり、巨悪に翻弄されながらも立ち向かう青年とその恋人の姿が鮮烈な印象を残す。 二段組で五百ページ。 イヤー、読み応えがありましたわ。 話は主に三つのサイドから語られます。 先ずカルト宗教の指導者のビル。 ビルは子供の時に高熱で脳症をおこし、預言者エリシャによって助けられた夢?、幻?を見る。 自分はエリシャに選ばれた人間と思い込んだ彼は、家を出、新興宗教団体“クリスチャンズ・オブ・イスラエル”に入る。 最初は無垢にエリシャへの信仰を持っていたビルだったが、その宗教団体で、「真のイスラエル人は古代イスラエル王国の子孫のみ、彼らは白人だった、白人のみが預言者や使途の末裔」と言う教義に心酔し、やがてビル自らが指導者になって行く。 次はウィルスン・カストロ=カストロ・ヒューズ。 キューバ人であるが、フィデル・カストロが政権を取ったことにより、前政権の軍人だったウィルソンは国を離れる。 その後、CIAと接触、中南米で軍の指導官として働く。 ビルの妹のドロシーと結婚したことにより、ビルと密接な関係を持つようになる。 アルゼンチンのブエノスアイレスでカストロ・ヒューズとなって、実業家として大成功を収める。 ヒューズの心には今もフィデル・カストロと、社会主義、共産主義に対する強い憎しみがあり、それによってビルと繋がっている。 三番目はダミアン・リンチ。 ダミアンは幼い頃に両親を、ビデラ政権による汚い戦争で拷問で殺されている。 誰が両親を殺したか、その者に罪を償わせると言うのが、ダミアンの執念になっている。 ダミアンはヒューズの娘・モニカと恋に落ちる。 そして三者が交わる物語が動くわけです。 ここからはあくまで私はこう思ったと言うことですが。 ビルとヒューズはアメリカ合衆国なのだと思うのですね。 宗教を信仰し、最初は純粋だったけれど、やがて傲慢になって行って、世界を正しく導くのは自分しかないと思い込むビル。 宗教を民主主義に変えれば、アルゼンチン人の作者が思うアメリカそのものではないかと。 余談ですが、傲慢になって行く過程の最初のきっかけがセックスって言うのも、アメリカに対する皮肉って気がする。 ビルは白人至上主義者ですが、妹の夫になったヒューズは白人じゃありません。 自分の教義には反しているのですが、それにはご都合主義の解釈で対応する。 これもダミアンのパートで語られていますが、共産主義を嫌う、あるいは恐れて、他国に自発的に生まれた政権を排除しようとして、その反対勢力に加担、結局独裁者を作り出してしまったアメリカの、その行動への正当性の理由付けそのままです。 一方、ヒューズですが、ビルが狂信的であるのに対して、ヒューズはまともな精神状態(人間とやってる事はまともじゃないですが)で、自分を害した者として共産主義を嫌ってる。 損得が絡んでるわけです。 これもまたアメリカ。 ビルとヒューズは自分達の妄信をかなえる為には、麻薬密売にも手を出している。 この小説は、自分の信じる事を成し遂げるのであれば、何をしても良いのか?。 どこまで人は「悪」になっていけるのか?、を描いていると思います。 自分は正しい信念の元に行っている、神から天啓を受けているのだと、そう理由付けて。 モニカは実は養子で、ビルと、ビルの妹のドロシーの幼馴染であるエヴァリンの子供です。 その為、完全な狂信者化したビルにより危機にあう。 モニカをヒューズから、ビルから救うのは、ヒューズの暴力を恐れて彼の言いなりになって身をやつしていたドロシーのモニカを思うことから生まれる決意と、カリスマ性を持つビルのそばで自分を殺し続けていたエヴァリンの勇気です。 小さな人間1人1人の良心、その結びつきによって、世界もまた救われるかもしれないんだと、作者が言ってるような気がしました。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2010年07月12日 22時28分37秒
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