「児童買春・児童ポルノ禁止法」の改正案、衆議院の解散で廃案になったおかげで、いろいろと気になっていることを書いていくゆとりができました。
今回は、「児童ポルノ」の定義が持つ問題点について、アメリカの事例を知ることができましたので、ご紹介します。
◆ fc2ブログ、suzacuさんの7月22日記事
↓<【米国】わが子への授乳写真は児童ポルノ? その1>
http://suzacu.blog42.fc2.com/blog-entry-52.html
以下にブログ記事のはじめの部分を引用します。2002年に、テキサス州で発生、男女二人が逮捕・起訴されましたが、2003年に起訴取り下げになった事件についての記事です。
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満1歳の我が子に授乳していた母親がその写真を父親に撮らせた。ところがその写真は警察に児童ポルノと判定され両親は逮捕された。さらに二人の子供たちは児童保護局に身柄を保護され児童養護施設に隔離された。両親は児童ポルノの単純所持違反として起訴され、20年以下の懲役を求刑された・・・
アメリカのテキサス州で発生した事件だ。
あらかじめお断りしておくが、これは6年前に起訴された事件である。刑事事件そのものはすでに検察側が起訴を取り下げて終結している。ところが今アメリカ(と英語圏の複数の国々)でこの事件が再び話題になっており、一部のニュースサイトやフォーラムではこの話題でコメント欄が沸騰状態になっている。
興味深いのは次の点だ。
1. なぜ今ごろになってこの事件が再び脚光を浴びているのか?
2. オタク系サイトでの反応も大きいが、それ以上に一般のサイトでの反応の方が大きい
これらの謎を解く前に、まずは事件自体の紹介をしておこう。日本ではこの事件はほとんど知られていないからだ。
(後略)
※以下は、事件の経過(裁判の過程も含む)についての詳細な記述の新聞記事の翻訳)
※太字強調はよたよたあひるによるもの
※まだ、ブログ主が「興味深い」とした点についての考察は書かれていません。これから続編が書かれる予定のようです。)
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上記ブログ記事でもリンクがはってある、この事件の経緯を追ったダラス・オブザーバー紙のURLも貼っておきます。英文を読むのが苦にならない方はどうぞ。
↓◆ダラス・オブザーバー 2003年4月17日
<1時間で逮捕/我が子への授乳写真は児童ポルノ?リーチャドソン市警に取材>
http://www.dallasobserver.com/2003-04-17/news/1-hour-arrest/
逮捕されたのはテキサス州在住のペルー人のカップルで、まだ移住して日が浅い人たちです(女性は2001年夏、男性はそのほぼ1年後に移住。ペルー在住時代からの知り合いのようです)。女性には離婚経験があり、前夫との間の子(男児4歳)も一緒に住んでいます。二人の間の子どもは1歳です。どうやら、恋人の子を妊娠した女性が先にアメリカに移住し、出産。その後、子どもの父親である男性がアメリカに移住したという経緯のようです。二人はまだ正式な結婚はしていないように読めますが、1歳の子どもは男性の性を名乗っています。
問題となった写真は、家族のスナップ写真で、その中に子どもの入浴シーンを撮影したものが数枚、満1歳の男の子が女性のおっぱいに食いついている写真が1枚あり、もっとも問題視されたのが、この授乳の写真でした。
裁判の起訴状には、「すなわち、実際に猥褻な表現......女性の乳輪の突起部以外の胸部が見られ、被疑者により雇用/強要/使用されて18歳以下の未成年であるロドリゴ・フェルナンデスは性的行為および性的活動に従事されられた」と書かれており、弁護士によれば、「起訴状では写真に撮影されているのは擬似的な授乳行為であり実際には性的行為であると記述されている。」「検察側の主張によれば男性は変質者であり、自らの性的欲望を満たすために写真を撮ったとしている」のだそうです。
女性は、写真を近所のドラックストアの「1時間プリントコーナー」に4本のフィルムをあずけています。その4本のフィルムには誕生日パーティの様子なども撮影されています。(何枚撮りかは書いていませんけど、24枚撮りのフィルムならおよそ100枚近くの写真が撮影されているわけですね)その家族スナップ写真の中の、たった1枚の授乳の写真が、性的なもの、性欲を刺激するもの、そして、カップルの男性がそれを見て楽しむためのものであるとされたわけです。さらに、子どもの入浴シーンの写真に、4歳の男児が性器を触っている写真もあり、それが性的なものと見なされたようです。家宅捜索も入りましたが、他に「児童ポルノ」「児童虐待」の証拠となるようなものは発見されていません。また、二人には犯罪歴もありません。
カップルは、これは子どもの成長の一段階の記念であるという主張をしていますが認められず、また、カップルが所属する教会の牧師が文化的な背景の違いからの誤解による逮捕であると新聞記者に語っています。二人の出身地であるペルーの農村部では、人前での授乳は当たり前のものであり、その記念写真をとることもまたしばしば行われているということを。
警察は2002年の11月に児童保護局のケースワーカーとともに女性の家をしらべ、その結果、子どもたちはカップルの元から引き離されて施設への隔離・保護を行っています。証拠は「性的虐待の疑惑写真である授乳シーンの写真」1枚のみです。最終的に2003年の3月に起訴はとりさげられたのですが、それでも子ども達はカップルの二人から奪われたままです。
カップルは、「性的問題を抱えた人のための集団治療」に参加し、高価な心理検査を自費で受けなくてはならず、子ども達を家に戻す条件としてウソ発見器による審問とカウンセリングの必要性を主張しているのことです。
記事は、州が子ども達をまだカップルから引き離したままの状態のところで書かれているために、その後の経緯はわかりません。
もしかしたら、他に資料があるかもしれないのですが。
満1歳といえば、そろそろおっぱい以外のお食事でやっていける年ですから、ご紹介したアメリカの事例の写真も「遊び飲み」だったでしょう。「やらせ」だった可能性だって十分にあります。でも、それは日常のありふれた様子の再現であって、性的シーンとしての強制された演技というのとはわけが違います。お風呂シーンの写真も、大人の全裸の写真も、家族の中の何も隠すことのないエロス的な関係って、いいと思うんですよ。それを記念に写真にとるのも私はあっていいことだと思います。自分の身体がすきで、裸が気持ちよくて、ってすごく大事なことだと思うんですけど。
でも、事例ではその「おっぱい遊び飲み」の写真は、許しがたい性的なものとして、写真の現像技師も警察も児童保護局のケースワーカーも州の心理学者も、裁判所の判事も疑惑を持ったし、警察と児童保護局は性的虐待であると確信したようです。
ひるがえって日本ではどうでしょうか。
我が家にも授乳の写真はあります。生まれたばかりのころの写真です。断乳に失敗したときの写真もあります。1歳になったころ、おっぱいにバイバイの絵を描いたのですがうまくいかなかったんですよね。
結局、とろろ丼さんは、3歳の誕生日まで何かあるとおっぱいに食いついてました。吸われているととりあえず母乳はでます。でも、もう3食普通にご飯を食べているのですから、「食事」というわけじゃないですよね。実は、私自身がやはり3歳の誕生日までおっぱいにくっついていたという話を母から聞いていて、それをまだ2歳だったころの彼女に話したことがあるのですが、それをしっかり覚えていて、誕生日の2週間前くらいに、あいかわらず食いついている彼女に「そろそろやめようよ」と言ったところ、くっついたまま、じっと目をみて指を2本Vサインにして出してみせました。「まだ2さいだよ」というつもりだったのです。
まだ離乳食を食べることができない間は、家の外の授乳もちょこちょこやっていた私ですが、さすがに1歳をすぎ、2歳をすぎて、3歳に近くなったころは、「公衆授乳」はしなかったですよ。必需品としての食料というよりは、母子のコミュニケーションですからね。しかも、とてもセクシュアルなものと結びついている。だって、生の身体と身体のコミュニケーションですよ。世の男性には申し訳ないけど(アライグマオヤジさんにも申し訳ないけど)、私は母乳育児をしている最中には男性との性的接触は不要でしたもん。いや別に、授乳が性的に興奮して気持ちいいなんてわけじゃないですよ。ただ、身体の求めるものが違っていたってことで。これって、「母性」っていう「セクシュアリティ」かしらん、と思ったことがあります。更にいうと、実は彼女は保育園の卒園まで夜寝るときには、私のおっぱいをさわっていたんです。これって、おかしいこと?児童の性的虐待にあたるかしら。いや、当たらないでしょう。少なくともこれまでの日本文化の中の育児では…多少だらしないかもしれないけど…松田道雄の「育児の百科」にだって、なかなかおっぱい離れをしない子のことも書いてあるしね。
でも、この前の「公衆授乳」という言葉を見て、なんだか世間は変わってきているのね、と実感したところです。でも、危険だから隠すのでしょうか。確かにそのような一面もありますけど、一方で隠すから「隠さないと危険になる」のじゃないか。そんな気もします。つまり文化の変容ですよね。
とにかく、警察の内部資料ではなくて、公の場でしっかりとした「児童ポルノ」の定義を議論していただきたいと考えています。廃案になった与党案、民主党案はどちらもそのままでは受け入れることができません。アメリカと日本とは違うけれど、日本だって、「クロ」と見なされた人へのバッシングはひどいものですからね。
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★2009年10月15日追記★
児童ポルノ法改正反対の人のトラックバックがつきました。
この人の立場には全く賛成しません。
「地獄への道は善意で敷き詰められている」ということは昔からいわれております。
何もアグネス・チャンさん1人をたたいたところでどうにもならないし、バッシングのスタイルがきらいです。
ほんというと、このトラックバックは消してしまいたい。
っていうか、このトラックバックみたいな記事を読むと、児童ポルノ法の改正・・・とくに単純所持規制、および創作物規制に対して、ある程度反対の立場でいることが嫌になります。一応「フェミニスト」を名乗っている私のブログに対しての嫌がらせなのか、それともトラバがついた記事が「児童ポルノ法」反対の主旨だから賛同トラバなのか、判断に苦しみます。
それでも、私は私の理由で「ある程度反対」「慎重に」という立場はやめません。
そのうえで、こちらのトラックバック記事にはやっぱり賛同できないと申しあげておきます。