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カテゴリ:読書
全日本食えばわかる図鑑 椎名誠 集英社文庫
アラスジ:阿鼻叫喚ぬぬぬめぬめりの青イソメ・ゴカイ丼は死んでも食いたくないが、郷愁のコンガリおごげご飯や味噌汁ぶっかけ飯の味は忘れられぬ。わっしわっし食べまくる男のエッセイ集。 笛の若旦那こと渋江譲二氏のブログは面白い。 短い文章で、絶妙のくすぐりを入れてくれる。 大変センスの宜しい方だ。 で、その渋江氏のブログのこのネタで、記憶を刺激されて読んだのが本書。 「くればわかる」 おぉ、懐かしい。 椎名誠のエッセイで、何度か目にした事のある店名なのだ。 以前は、独特の椎名節が好きでかなり読んでいたのだが、最近は殆ど縁切状態。 愛読している時には気にならなかった、氏の偽悪っぷりが鼻につくようになちゃって。 偽悪と言ったら変かな。 『オレ、男。食う、寝る、出す。ドスドスドス』 と言った、いかにも野放図な男性アピールに、作為性を感じるようになってしまったんだよなぁ。 冷静になって読んでみると、かなり上目使いで粘着質な中年男の姿が透けて見えてくるようになってしまい。 多分、ご自身が思っているほど、単純明快な日本男児ではない。 いや、本人もそれを自覚していて、演出しているのか。 まぁ、それはそれで結構。 だが、ファンだったときには判らなかったその演出の拙さが、一度気がついてしまうと、受け入れ難いものに変じてしまった。 以来、まったく受け付けられず。 手元にある本も、押入れの奥深くにしまいこんでしまった。 が、偶然にもこの一冊だけは、本棚の1つに入れ忘れたままになっており、渋江氏のブログが縁で、十年ぶりに読み返した次第。 内容は、まぁ、特に取り立てて如何こうと言うまでもない、他愛ない食べ物話。 所々“オレ、男だもんね”が垣間見られて鼻白まなくもないが、概ねはまったりと読む事が出来る。 食えばわかる図鑑と銘打っていても、味噌汁やお新香、おでんなんかの日常食への思い入れを、軽い文章で綴っているので、肩のこらない時間つぶしには悪くない本だ。 結局、人間、子供のころから慣れ親しんだ味が一番なんだよなぁ。 で、くだんの「くればわかる」なのだが、もし椎名氏が若かりし頃に通っていた店だとしたら、もはや老舗の域に達した居酒屋だ。 本書のあとがきに記述されているが、椎名氏が20代前半(渋谷氏と同じ年代の頃だ)に、弁護士の木村普介氏やイラストレーターの沢野ひとし氏と、しばしば足を運んだ店だとか。 氏の年齢から計算するに、ざっと40年前くらい前のお話。 もし、渋谷氏の「くればわかる」が中野のお店だとしたら、ビンゴ。 この手の居酒屋が創業40年以上って、凄いんじゃありませんかね? 因みに、このお店、非常にお安いそうだ。(当時の話では) 沢野氏が空腹になると機嫌が悪くなる御仁だそうで、このお店にひっかけて“食えばわかる男”と言われていたらしい。 そして、そこから本書のタイトルに至る、っと。 (他の椎名本同様、この本にも沢野氏のイラスト入り。氏の、何とも言えぬシュールなセンスのイラストは好きだ。) さて、妙なつながりで、思いかけず過去の本を発掘してしまった。 趣味に合わなくなったとは言え、それなりに愉しむ事が出来たので、まぁ良し。 これも縁という事で、思い切ってTBさせて頂いちゃったりしようかと、さっきから逡巡中。 えぇい、ままよ。ポチっとな。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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