カテゴリ:詩
父を想いだしています。
父は60歳になってから独学でワープロを始めました。 もう30年近くも前になります。 **************** 「ワープロ始めたさ」 「あんなぁ手紙出したから読め」 父からの電話は一方的に話して切れた まだ離れて住んでいる時のこと 便箋六枚の手紙が届いた 「拝啓、拝啓、拝啓、拝啓」 「お元気ですか、お元気ですか」 「お元気ですか、お元気ですか」 「児玉さんのばあさんが死にそうだそうだ」 「児玉さんのばあさんが死にそうだそうだ」 この文面を繰り返し繰り返し 父の手紙は最初で最後 **************** 私は未だにワープロは出来ない。 父が使っていたワープロは押入の奥へしまい込んだ。 私が使っているPCを見て父は「お前のワープロはテレビにもなるのか」と びっくりしていた。 亡き父の声が聞こえてきそうな気がする。 友から届いたブックマーク(栞) 可愛い団扇には朝顔の模様。 ****************** セピア色の故郷 故郷は青草が生い茂り夏の陽射しになっている じっと立っていると景色がセピアになってくる 黙々と働く父と忙しそうな母と幼い弟達 何十年も前の光景が浮かんでくる 痩せた畑の向こう端まで耕しきった父 セピア色は父の土地 火山灰の色 泥炭地を流れる谷地水の色 そして私とすべてを結ぶ風の色 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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